再生医療等製品

再生医療等製品#11 ブレヤンジ

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販売名ブレヤンジ®静注
一般的名称リソカブタゲン マラルユーセル
製造販売者セルジーン株式会社
→ 2023/7 ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社に変更(法人統合)
対象疾患 (承認日/保険収載日)①以下の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫
 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、
 形質転換低悪性度非ホジキンリンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫
②再発又は難治性の濾胞性リンパ腫
(2021年3月22日/2021年5月19日)
保険償還価格3264万7761円 (保険償還価格の算定)
関連文書添付文書 (PMDAウェブサイト)
インタビューフォーム (第7版 2023年8月改訂)
承認情報、最適使用推進GL等(PMDAウェブサイト)

 

【製品概要】

ブリストルマイヤー社 CAR T/ブレヤンジ

ブレヤンジ®静注(以下、ブレヤンジ)は、再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫や濾胞性リンパ腫を対象とする再生医療等製品で、日本ではキムリア、イエスカルタに続く3品目のCAR-T製品です。治療ごとのばらつきを抑えるために、CD4陽性細胞とCD8陽性細胞を別々に同数投与する点が既存のCAR-T細胞を異なります。また対象疾患がキムリアやイエスカルタと比較して広くカバーされています。

米セルジーン社が製造販売承認を取得しましたが、米ブリストルマイヤー社によるセルジーン社の買収・完全子会社化に伴い、2021年7月より製造販売業者がブリストルマイヤー社へ変更されています。

薬価はキムリア、イエスカルタと同じく1患者当たり3264万7761円と設定されており、保険償還価格の算定における市場規模予測では、ピーク時(販売開始10年目)の使用患者数239人、販売金額82億円と予測されています。

 

【対象疾患と作用メカニズム】

対象疾患

①以下の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫、および、②再発又は難治性の濾胞性リンパ腫が対象となります。
ただし、CD19抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない患者に限ります。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫B細胞のうち、大きな細胞核をもつB細胞がびまん性に(広範囲に広がっている状態)増殖して広がる悪性リンパ腫で、月単位での進行が見られ、中悪性度に分類されます。日本での悪性リンパ腫の3-4割を占めます。
原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の約10%を占めるサブタイプのひとつであり、胸腺B細胞由来の進行が速い悪性リンパ腫です。
形質転換低悪性度非ホジキンリンパ腫濾胞性リンパ腫から形質転換した低悪性度の非ホジキンリンパ腫です。
高悪性度B細胞リンパ腫週単位で進行する悪性度の高いB細胞リンパ腫です。
濾胞性リンパ腫濾胞性リンパ腫はリンパ節内の濾胞(B細胞が集まっている箇所)に生じる進行の遅い低悪性度のリンパ腫です。

 

構造および作用メカニズム

ブレヤンジ CARの構造 (出典:ブレヤンジ®静注 インタビューフォーム)

ブレヤンジはCAR-T技術を応用した抗がん細胞製品であり、キムリアやイエスカルタと同じく抗CD19キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor:CAR)を患者自身のT細胞に発現させた抗CD19 CAR T細胞です。

抗原認識部位でB細胞表面に発現するCD19を選択的に認識し結合すると、各ドメインを介してシグナルが伝達されることでCAR-T細胞が活性化します。活性化したCAR-T細胞は細胞傷害活性を発揮し対象細胞を攻撃するとともに、同時に自己増殖を起こすことで抗腫瘍活性を増強および持続することができます。

CARの構造としては、キムリアとは膜貫通ドメイン領域(キムリアではCD8a)、イエスカルタとは細胞内共刺激ドメイン(イエスカルタではこの部位はCD28由来)が異なります。

ブレヤンジによるリンパ腫細胞の傷害 (出典:ブレヤンジ®静注 インタビューフォーム)

ブレヤンジでは患者自身のT細胞にCARを発現させた後、CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞に分けてそれぞれを別バイアルに包装し、同量ずつ投与します。CD4陽性T細胞はヘルパーT細胞と呼ばれB細胞の抗体産生を促進する働きがあります。CD8陽性T細胞は細胞傷害性T細胞と呼ばれ、自己・非自己細胞の識別やウイルス感染細胞、がん細胞といった細胞の殺傷、除去に関わっています。これらの2種類の細胞の投与量を一定とすることで治療ごとのばらつきを抑えています。

 

【製造および治療の流れ】

治療の流れ (出典:CAR T療法に特化した情報メディア CAR T ブレヤンジ)

ブレヤンジは患者自身のT細胞から製造されるため、まず白血球アフェレーシス(体外循環による分離)により患者のT細胞を採取します。採取されたT細胞を冷蔵保存下で国内の協力企業の施設にて凍結した後に米ワシントン州ボセルにあるブリストルマイヤーズ社の細胞免疫療法製造施設に送られ、CAR遺伝子の導入等の加工が行われます。レンチウイルスを用いたCAR遺伝子導入後にCD4およびCD8陽性細胞をそれぞれ増幅させ別々に包装し、-130℃以下の凍結状態で医療機関に送られ投与されます。

このようにブレヤンジは対象となるリンパ腫が比較的幅広く、治療ごとのばらつきが抑えられる剤型となっていますが、一方で製造期間が長く、この点が競合品であるイエスカルタに比べ売り上げが低い要因との指摘もあります。

 

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