〇難治性脳疾患(悪性脳腫瘍・脳損傷)の治療の開発を行う慶応義塾大学発のベンチャー企業
〇慶応義塾大学医学部の戸田教授らが開発した自殺遺伝子導入iPS細胞由来神経幹細胞を用いた脳疾患治療法がコア技術
〇悪性神経膠腫(グリオーマ)を対象とした臨床試験を2025年に計画
【会社情報】
会社名 | 株式会社iXgene iXgene Inc. |
所在地 | 東京都新宿区内藤町1-6 |
代表者 | 代表取締役 CEO 古川俊治 |
設立 | 2020年1月6日 |
上場 | 非上場 |
【会社概要】
自殺遺伝子導入iPS細胞由来神経幹細胞を用いた難治性脳疾患の治療の開発を行う慶応義塾大学発のベンチャー企業です。慶應義塾大学医学部脳神経外科の戸田正博 教授らの開発した技術を基に、悪性神経膠腫(グリオーマ)や脳損傷に対する再生医療の実用化を目標として、2025年の臨床試験開始を目指しています。2023年10月より慶應義塾大学医学部および住友ファーマ社と悪性脳腫瘍治療薬の実用化に向けた共同研究を行っています。
社名は”iPS細胞”(i)と”ゲノム編集”(gene)を掛け合わせる(X)ことに由来しています。代表取締役CEOの古川俊治氏は2023年11月現在、慶応義塾大学医学部外科教授、同大学法科大学院教授(兼担)、参議院議員と幅広い活動をしており、また医学博士、弁護士、経営学修士(MBA)と多くの資格を所有する非常に多才な方です。
【事業内容】
自殺遺伝子を組み込んだiPS細胞から誘導した神経幹細胞を用いて、悪性神経膠腫(グリオーマ)や脳損傷に対する再生医療の開発を進めています。 慶應義塾大学医学部脳神経外科の戸田正博 教授らは、神経幹細胞が脳の腫瘍部位に指向性を持って移動することを見出しました。そこでiPS由来神経幹細胞を治療用遺伝子を運ぶ「運び屋」として利用することで難治性脳疾患の治療法の実現を目指しています。
脳腫瘍の再発治療
悪性神経膠腫(グリオーマ)は悪性の代表的な悪性脳腫瘍であり、非常に予後が不良な疾患です。初期治療として手術および放射線治療に化学治療を組み合わせた治療が行われますが、数カ月から数年で再発することも多く、再発に対する標準治療はまだ確立されておらず、新たな治療法の開発が求められています。
戸田教授らは、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術により自殺遺伝子としてyCD-UPRTを組み込んだiPS細胞を作製し、そこから分化誘導により神経幹細胞を得ました。このiPS細胞由来神経幹細胞をグリオーマ患者に移植すると、神経幹細胞の指向性によりグリオーマ部位に集積します。その状態で5-FCという薬剤を投与すると、5-FCはyCD-UPRTの働きにより細胞傷害性があり抗がん剤としても利用される5-FUに変換され、移植したiPS細胞由来神経幹細胞の周囲のグリオーマに対して抗腫瘍効果を示すと考えられます。
戸田教授らのグループはヒトグリオーマ細胞を移植したモデルマウスを用いた動物実験において、この治療法が高い抗腫瘍効果を示すことを実証しています。
臨床での移植方法としては、脳腫瘍を切除した箇所への投与や脳室内への投与が想定されています。
iXgene社ではこれらの研究成果を実用化するために、2025年の臨床試験開始を目指して開発を進めています。
脳損傷等からの機能回復
戸田教授らは同iPS細胞由来神経幹細胞を用いて、脳損傷に対する再生医療の研究も行っています。この治療においては、神経幹細胞から分泌される神経栄養・保護因子による神経保護作用や抗炎症作用などによる治療効果が期待されます。しかしながら治療上のリスクとしては、移植した細胞が未分化な状態で残存することによる腫瘍化や、移植細胞による何らかの有害事象の発生などが考えられます。そこで、移植後、機能改善が見られた後に5-FCを投与することで、脳内に残存する移植細胞を選択的に死滅させることで、これらのリスクを取り除きます。
戸田教授らのグループは脳挫傷モデルマウスを用いた動物実験において、移植したiPS細胞神経幹細胞が損傷部位に集積し、それらから分化したニューロンが生着し、運動機能が改善されることを実証しています。
iXgene社では脳損傷に対しても同様に早期の臨床試験開始を目指して開発を進めています。