販売名 | ジェイス |
一般的名称 | ヒト(自己)表皮由来細胞シート |
製造販売者 | 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング |
対象疾患 (承認日/保険収載日) | 重篤な広範囲熱傷 (2007年10月29日/2009年1月1日) |
先天性巨大色素性母斑 (2016年9月29日/2016年12月1日) | |
栄養障害型/接合部型表皮水疱症 (2018年12月28日/2019年7月1日) | |
保険償還価格 | ① 採取・培養キット 4,460,000円 ② 調製・移植キット 154,000円/枚 |
関連文書 | 添付文書 (PMDAウェブサイト) 審査報告書 (PMDAウェブサイト) |
【製品概要】
患者自身から採取した皮膚組織から培養した、表皮細胞シートです。広範囲の熱傷や、皮膚の切除を伴う手術後に、傷を早く保護し体液の蒸散や感染症を防ぐ目的で使用されます。日本国内の再生医療等製品第1号であり、当初は医療機器として承認を取得しましたが、その後薬機法の施行に伴い再生医療等製品として登録されています。
2019年3月期の売上高は10億310万円となっています(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング2019年3月期決算説明資料)。薬価から算出した推定適用患者数は、約97人となります。
【対象疾患】
①重篤な広範囲熱傷
重篤な広範囲熱傷で、深達性II度およびIII度熱傷創の合計面積が体表面積の30%以上の熱傷が適応対象となります。保険算定限度は40枚、ただし、医学的に必要がある場合は50枚まで認められています。
自家表皮シートであり、患者自身の組織を採取してJ-Tech社に送り培養するため、熱傷が発生してから治療の提供まで約3週間かかります。そのため、その待機中に亡くなる例があります。保険収載承認当初の条件では、ジェイスを治療に提供した時点で支払いが発生するようになっていましたが、患者が途中で亡くなった場合、培養コストがかかっているにも関わらず費用の請求はできませんでした。そこでジェイスについて2016年に保険算定が見直され、現行の採取時と提供時の2段階の請求方式へと変更になりました。
②先天性巨大色素性母斑
先天性巨大色素性母斑は、生まれつき皮膚に黒い母斑(ほくろ)が存在する疾患で、成人で20cm以上のものを言います。新生児の約2万人に1人発症すると言われています。放置すると悪性黒色腫の発症リスクが高いことが知られています。
ジェイスは、先天性巨大色素性母斑を切除した後の創部を保護することを目的に使用され、治療面積が体表面積の5%以上など、既存の標準的な治療では対応しきれない場合に適用されます。保険算定限度は30枚となっています。
③栄養障害型/接合部型表皮水疱症
水疱症は、皮膚を構成する表皮、基底層、真皮をそれぞれつなぐタンパクが先天的に変異もしくは欠損する遺伝性の難病です。皮膚構造が脆弱になることで、日常生活のちょっとした刺激や摩擦により水疱(水ぶくれ)やびらん(ただれ)を起こします。重症な栄養障害型表皮水疱症では、瘢痕形成後、瘢痕がんを合併することもあります。10-20万人に1人の割合で発症が見られ、日本国内に1,000-2,000人の患者がいると言われています。
分類 | 発症部位 | 原因タンパク | 割合 |
単純型 | 表皮基底細胞 | ケラチン5, ケラチン14 プレクチン | 32% |
接合部型 | 表皮-基底膜間 | ラミニン332, 17型コラーゲン、α6β4インテグリン | 7% |
栄養障害型 | 基底膜-真皮間 | 7型コラーゲン | 54% |
キンドラー症候群 | 表皮内、表皮-基底膜間、真皮内 | キンドリン-1 | 7% |
ジェイスは、難治性または再発性のびらん・潰瘍を有する栄養障害型または接合部型表皮水疱症に適用され、保険算定限度は50枚となっています。表皮水疱症は遺伝子疾患であるため、表皮シート移植により根治するというわけではなく、びらん(ただれ)や潰瘍に対する対処療法となります。