〇遺伝子治療の研究開発を推進
〇2019年3月にHGF遺伝子治療用製品コラテジェン®が再生医療等製品として承認
〇その他のパイプラインとして、NF-κBデコイオリゴDNAと高血圧DNAワクチンが臨床入り
会社名 | アンジェス株式会社 AnGes, Inc. |
所在地 | 大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目7番15号 彩都バイオインキュベータ1階 |
代表者 | 代表取締役社長 山田英 |
設立 | 1999年12月17日 |
上場 | 2002年9月25日 マザーズ (4563) |
【会社概要】
遺伝子治療の研究開発を行うバイオベンチャーです。重症虚血肢を対象とするHGF遺伝子治療用製品コラテジェン®が、2019年3月に再生医療等製品として承認(条件及び期限付製造販売承認)されています。
同社は1999年に大阪大学の森下竜一博士がHGF遺伝子治療薬の創薬を目的に株式会社メドジーンを設立したことに始まります。2001年に社名をアンジェスMG株式会社と変更し、2002年にはマザーズに上場を果たしました。その後、2017年に社名を現在のアンジェス株式会社と変更しています。AnGesの社名はフランス語の「天使(ange)」に由来しています。
2015年に会社のあるべき姿を明確化・共有することを目的として長期ビジョン「2025年ビジョン」を策定しています。
□ 遺伝⼦医薬のグローバルリーダー 世界で認知される遺伝⼦治療・核酸医薬のスペシャリストとなる
□ 新市場の創出 治療法のない病気の新薬を実⽤化する
□ 売上⾼ 500 億円以上
このうち、⽶国でのHGF遺伝⼦治療薬の進展状況等がビジョン策定時より遅れていることなどが要因となり、売上高に関する目標については一旦取り下げとなりましたが、その他のビジョン達成に向け引き続き事業展開が進められています。
【事業内容】
再生医療等製品
2019年3月に、重症虚血肢を対象とするHGF遺伝子治療用製品コラテジェン®(一般名ベペルミノゲンペルプラスミド)について、日本の遺伝子治療用製品として条件及び期限付製造販売承認を取得しました(販売は田辺三菱製薬)。同年9月に保険収載されています。
開発パイプライン
現在、以下の3つのプロジェクトにおいて臨床試験が進められています。
①HGF遺伝子治療用製品
日本国内については、前述のコラテジェン®の製造を担当します(販売および使用成績比較調査は田辺三菱製薬)。
海外については、米国において臨床試験を進めていたものの2016年にグローバル第III相を中止しており、現在新たな試験計画を策定中です。また、2019年にイスラエル企業のKamada社にイスラエル国内の独占的販売権許諾としてライセンスアウトしています。
②NF-κBデコイオリゴDNA
デコイ(Decoy)とは「囮(おとり)」のことです。NF-κBデコイオリゴDNAは、転写因子(特定の遺伝子の発現のスイッチを入れる働きのある因子)であるNF-κBの結合部位をもっており、これが囮となり、こちらにNF-κBを結合させることで、本来のNF-κBの働きを阻害します。
NF-κBは免疫・炎症反応を担っており、これを阻害することで過剰な免疫・炎症反応を抑えます。
軟膏製剤としての開発が行われ、2016年にアトピー性皮膚炎を対象に第III相臨床試験が日本国内で行われましたが、主要評価項目は未達でした。
現在は、椎間板性腰痛症を対象として、研究開発が進められており、米国において第Ib相臨床試験が進められています。
さらに、次世代型として、同じく炎症反応に関わる転写因子であるSTAT6の結合部位を併せ持つキメラデコイの開発が大阪大学と共同で進められています。マウスを使った動物試験においては、気管内に投与することで気管の炎症の抑制が見られており、喘息の予防・治療薬となることが期待されます。
③DNAワクチン
高血圧を対象としたDNAワクチンの開発を進めています。
血圧の上昇において重要な働きをするタンパクの一つにアンジオテンシンIIがあります。このアンジオテンシンIIがアンジオテンシンII受容体に結合することで、血管の収縮や血液量の増加が起こり、血圧が上昇します。
本DNAワクチンは、投与することで体内に抗アンジオテンシンII抗体を作り出しアンジオテンシンIIn働きを抑制することで血圧上昇を抑え、高血圧を治療することを目的としています。
2018年4月より、オーストラリアにおいて第I/II相臨床試験が進行中です。
④その他
前述のパイプラインのほかに、以下の疾患に対して研究開発が進められています。
– 慢性B型肝炎
慢性B型肝炎に対する遺伝子治療薬をVical社(米国)と共同開発しており、現在動物実験の段階です。
– エボラ出血熱抗⾎清製剤
サスカチュワン大学(カナダ)と共同で、エボラ出血熱に対する血清製剤の開発を進めています。エボラウイルスに対するDNAワクチンをウマに投与することで、エボラウイルスに対する抗体価の高い抗血清が得られ、そこから精製した抗体をエボラウイルスを感染させた動物に投与した結果、ウイルス感染による死亡を阻止することを確認しています。
現在、臨床試験を目指し、さらなる前臨床試験を進めています。
– 急性呼吸窮迫症候群
Vasomune社(カナダ)と急性呼吸窮迫症候群に対する治療薬の共同開発を進めています。
遺伝子治療ではなく、Vasomune社が創製したTie2受容体アゴニスト化合物を用いた治療です。アンジェス社はHGF遺伝子治療薬の開発を通して得た知見やノウハウといった強みを生かして開発を進めます。
このほかに、バーコードナノパーティクルと呼ばれる個々のがん患者に最も有効な抗がん剤を選択するための意思決定ツールとなる診断技術を提供するBarcode Diagnositics社(イスラエル)と資本提携を行っています。
アンジェス賞
同社は遺伝子治療全体の発展を目的として、「アンジェス賞」および「アンジェストラベルグラント賞」を創設し、毎年、日本遺伝子細胞治療学会発表演題より選考し、授与しています。歴代の受賞者は以下の通りです。
※アンジェス賞は前年の発表演題から、トラベルグラント賞は当年の発表演題から選考・授与されます。
アンジェス賞 | |||
上野修市 | 自治医科大循環器内科学部門 | Inhibition of TGF-beta/Activin signaling in the early phase or stimulation of activin signaling in the following phase combined with Wnt-3a stimulation enhances the differentiation into cardiac myocytes in mouse embryonic stem cells. | |
林 宏樹 | 大阪大学大学院医学系研究科 | Functional analysis of a novel gamma-secretase inhibitor, HIG1. | |
房木ノエミ | ディナベック株式会社 | Simple and efficient generation of foreign-gene-free human iPS cells without chromosomal damage using Sendai virus RNA vectors. | |
山口朋子 | 国立医薬基盤研究所 | Induction of type I interferon by virus-assocated small RNAs. | |
田澤 大 | 岡山大学病院 | Antitumor effect of telomerase-specific oncolytic adenovirus on human bone and soft tissue sarcoma cells. | |
分田貴子 | 国立がんセンター | “ADD-BACK” therapy with HSV-TK gene-modified lymphocytes after T-cell-depleted haploidentical hematopoietic stem-cell transplantation, Phase I study. | |
佐々木克己 | 岡山大学大学院医歯薬総合研究科 | A Phase I/II study of reduced expression in immortalized cells (REIC/DKK-3) gene therapy for prostate cancer; A summary of neoadjuvant group. | |
田上聖徳 | 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 | Survivin-responsive conditionally replicating adenovirus efficiently kills rhabdomyosarcoma-initiating cells: A promising m-CRA strategy for treating cancer stem cells. | |
岡田浩典 | 国立精神・神経医療研究センター | Generation of muscular dystrophy NHP model with rAAV 1 and 9-mediated transduction of common marmoset. | |
佐々木克己 | 岡山大学大学院医歯薬総合研究科 | A Phase I/IIa study of REIC/Dkk-3 (reduced expression in immortalized cells) gene therapy for prostate cancer; Challenges in establishing REIC/Dkk-3 as a cancer vaccine. | |
岡田浩典 | 国立精神・神経医療研究センター | rAAV1 and 8-mediated induction of local opmd histopathology in common marmoset. | |
山本由姫 | 千葉県がんセンター研究所 | A targeting ligand enhances infectivity and cytotoxicity of an oncolytic adenovirus in human pancreatic cancer tissues. | |
黒埼 創 | 鳥取大学大学院医学系研究科 | Engineered integration-free iPS cells using artificial chromosome vectors for hemophilia a therapy. | |
谷島 翔 | 東京大学医科学研究所 | Treatment of a mouse orthotopic esophageal squamouse cell carcinoma model using G47∆, a third generation oncolytic HSV-1. | |
相良 京 | 東京大学医科学研究所 | Novel recombinant Coxsackievirus B3 infection shows potent oncolytic activity against human non-small cell lung cancer and triple-negative breast cancer. | |
中武 大夢 | 鳥取大学大学院医学系研究科 | Preclinical study for tumor-targeted and armed oncolytic vaccinia virus for systemic cancer virotherapy. | |
小松原 将 | 国立がん研究センター中央病院 | p53-armed telomerase-specific oncolytic adenovirus sensitizes human soft tissue sarcoma cells to ionizing radiation. | |
堀田亨祐 | 鳥取大学大学院医学系研究科 | Predictive biomarkers for cancer virotherapy with oncolytic vaccinia virus. | |
Jia Yang | 東京大学医科学研究所 | Novel microRNA engineered coxsackievirus B3 for oncolytic virotherapy. |
アンジェス トラベルグラント賞 | |||
第1回(2011年) | Wuh-Liang Hwu | National Taiwan University Hospital (Taiwan) | Gene therapy for aromatic l-amino acid decarboxylase deficiency – one year follow-up. |
第2回(2012年) | 足立 圭 | Oregon Health and Science University (USA) | Tissue-detargeting AAV9 mutants identified by comprehensive alanine scanning of the capsid protein. |
第3回(2013年) | Cho Jung Jongc | Kolon Life Science Inc. (Korea) | A Phase IIb clinical study of Tissuegene-C (TG-C) in patients with osteoarthritis. |
第4回(2014年) | Cho Jung Jongc | Kolon Life Science Inc. (Korea) | Tissuegene-C (TG-C), TGF- β1 transduced chondrocyte, improved clinical scores in patients with osteoarthritis: a phase 2b study. |
第5回(2015年) | 稲垣 亮仁 | University of Miami (USA) | Therapeutic efficacy of retroviral replicating vectors expressing thymidine kinase prodrug activator genes in experimental models of human glioma. |
第6回(2016年) | Mizuho Sato-Dahlman | University of Minnesota (USA) | Systemic treatment of Mesothelin-targeted oncolytic adenovirus eliminates pancreatic cancer. |
第7回(2017年) | Samuel J. Huang | Oregon Health and Science University (USA) | A novel single amino acid mutation to AAV9-PHP.B detargets the liver while retaining highly efficient brain neuron transduction. |
第8回(2018年) | Mizuho Sato-Dahlman | University of Minnesota (USA) | Systemic treatment with Mesothelin-targeted oncolytic adenovirus shows efficacy patient-derived xenograft of pancreatic cancer. |
第9回(2019年) | Samuel J. Huang | Oregon Health and Science University (USA) | A transcription-dependent approach to directed evolution of the AAV capsid identifies novel liver detargeted variants capable of enhanced neuronal transduction in mouse and non-human primate. |