(2020年5月25日 更新)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年12月に中国湖北省武漢市で初めて確認されて以降、世界各地に感染が拡大し、2020年5月24日現在世界216の国・地域で、約521万人の感染および約33万7700人の死亡例が確認されています。
抗インフルエンザ薬や喘息治療薬の転用や、ワクチンや新規医薬の開発が進められていますが、再生医療の観点から開発が進められている治療法を紹介します。
疾患名 | 新型コロナウイルス感染症/COVID-19 (Coronavirus disease 2019) |
原因ウイルス | SARS-CoV-2 |
症状 | 2-14日の潜伏期間後、発熱や咳等の風邪に似た症状を示す。 重症化した場合、呼吸器不全を起こし死に至る場合もある。 |
患者数 | 【国内】 感染者数:1万6550人 死亡者数: 820人 (2020年5月24日現在 厚生労働省統計) 【全世界】 感染者数:520万6614人 死亡者数: 33万7736人 (2020年5月24日現在 WHO統計) |
【COVID-19を対象とする再生医療】
ヨーロッパの幹細胞研究者の非営利ネットワークであるEuroStemcellが表明しているように、2020年5月24日現在、COVID-19に対する確立された細胞治療はありません。しかしながら、治療法の開発が世界中で進められており、臨床研究において効果が見られたという報告もあります。
国内では、日本再生医療学会が2020年5月20日に「COVID-19治療を目的とした幹細胞移植に対する日本再生医療学会の考え方」の声明を発表しています。この中で『科学的な観点では一部の幹細胞がCOVID-19の劇症化を抑制する可能性は、考えうるものであり、安全性や有効性を評価するために適切にデザインされた臨床試験によって幹細胞移植を評価することについては強く支持』することが述べられています。
以下に、現在進められているCOVID-19治療研究情報を紹介します。
I. ウイルス感染細胞を標的とするNK細胞治療法
NK細胞を用いた、患者体内のウイルス感染細胞を標的とする治療の開発が、米Celularity社によって進められています。Celularity社は、胎盤由来細胞を用いた細胞治療の開発を行う企業です。同社のパイプラインのひとつである、胎盤造血幹細胞由来NK細胞CYNK-001を用いた第I/II相臨床試験のIND申請が、2020年4月2日にFDAにより承認されています。
また、中国においても西安医学院第二附属医院や南昌大学第二附属医院で臨床試験が計画されており、中国臨床試験データベースに登録されています(自然杀伤细胞=NK細胞)。
II. 炎症抑制治療法
COVID-19による主な死因の一つは、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)による呼吸不全であり、ARDSを発症したCOVID-19感染患者の半数が死に至ったという報告もあります(Wu et al. JAMA Internal Med, March 13, 2020)。ARDSは感染症などにより肺で炎症が起こる疾患で、肺胞や毛細血管に傷害が加えられることで呼吸器不全が起こります。そこで、炎症抑制作用のある細胞を利用した治療法の開発が進められています。
①間葉系幹細胞(MSC)
MSCの炎症抑制作用を利用して、MSC移植によるCOVID-19起因ARDSの治療法研究が進められています。
上海大学と中国科学院が首都医科大学附属北京佑安医院で行ったMSC移植臨床試験では、7名のCOVID-19肺炎患者にMSCを移植した結果、移植2日後に肺機能と症状が大幅に改善されています(Zikuan et al. Aging and Disease, 11;216-228 (2020))
このほかにも、MSC/中国人民解放軍総医院第五医学センター、歯髄間葉系細胞/武漢大学附属人民医院、臍帯MSC/長沙第一医院などが、中国臨床試験データベースに登録されています。
日本国内では、ヘリオス社が以前よりARDSを対象として、骨髄由来間葉系幹細胞製品MultiStem®を用いた臨床試験を進めていました。この臨床試験において、COVID-19を起因とするARDS発症患者の組入れを開始しました。また、テラ社は、CENEGENICS JAPAN株式会社とCOVID-19肺炎に対する間葉系幹細胞を用いた治療法の開発に関する共同研究契約を締結し、COVID-19に対する細胞治療の開発を開始することを発表しています。続いて、ロート製薬株式会社が大阪大学と共同して、脂肪幹細胞を用いた治験を計画していることを発表しています。
②線維芽細胞
同様に皮膚線維芽細胞の抗炎症作用を利用したCOVID-19起因ARDSの治療法の開発が、米FibroGenesis社によって進められています。臨床試験の登録は行われていませんが、この治療法について特許申請を行っています。
III. 消化管免疫治療法
消化管の免疫に関与するとされるM細胞(小襞細胞/microfold cell)を用いた治療法の研究も進められています。上記の北京佑安医院では、ヒトES細胞由来M細胞(CAStem)を用いた臨床試験がNIHの臨床試験データベースに登録されています。
【臨床試験】
NIHの臨床試験データベースであるClinical Trials. gov に、COVID-19を対象とした細胞治療臨床試験として以下が登録されています。