再生医療ベンチャー

再生医療ベンチャー#3 ヘリオス

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〇 加齢性黄斑変性症,代謝性肝疾患,および固形がんを対象にしたiPS細胞由来細胞医薬品の開発

〇骨髄由来間葉系幹細胞製品を米国企業より導入し、急性期脳梗塞および急性呼吸窮迫症候群に対する臨床試験を進行中

〇大日本住友製薬やニコンと提携し、製造体制の準備も盤石

 

【会社情報】

会社名 株式会社ヘリオス
HEALIOS K.K
所在地 本社:東京都港区浜松町2-4-1 世界貿易センタービルディング15階
神戸研究所:兵庫県神戸市中央区港島南町1-5-2 神戸キメックセンタービル3階
代表者 代表執行役社長CEO 鍵本忠尚
設立 2011年2月24日
上場 2015年6月16日 マザーズ (4593)

 

【会社概要】

加齢性黄斑変性症,代謝性肝疾患,および固形がんを対象としたiPS細胞再生医薬品の研究開発を行う企業です。また、米国企業より骨髄由来幹細胞製品を導入し、急性期脳梗塞および急性呼吸窮迫症候群の臨床試験を進めています。

社名の由来:『Helios(ギリシャ神話の太陽の神)とHeal(癒す、治す)の二つの言葉から構成され、難治性疾患治療の新たな希望の光と、疾患に侵された患者さまを癒していきたいという願いが込められています。』(株式会社ヘリオスウェブサイトより引用)

 

【事業内容】

開発パイプライン

iPS細胞と体性幹細胞(骨髄由来間葉系幹細胞)の細胞医薬品の開発が進められています。

①iPS細胞再生医薬品

加齢性黄斑変性症,代謝性肝疾患,および固形がんを対象とした治療法の開発が進められています。

加齢性黄斑変性症は大日本住友製薬、代謝性肝疾患は横浜市立大学との共同開発として行われています。

(1) 加齢性黄斑変性症(開発コード: HLCR011/HLCR012)

黄斑とは、網膜の中心部に位置する視細胞が密集している部位であり、視力に重要な役割を担っています。加齢により黄斑に異常が起こることで、ゆがみ、ぼやけ、失明等の視力障害が起こる症状が加齢性黄斑変性症で、50歳以上の約1%に見られ、日本国内の患者数は約70万人と言われています。

創業者の鍵本氏は元々眼科医であり、加齢性黄斑変性症の患者との出会いが企業の原動力となったことが、同社ウェブサイトにて語られています。

加齢黄斑変性症の原因は、滲出型(Wet型)と萎縮型(Dry型)に大別されます。同社では、iPS細胞から網膜色素上皮細胞(RPE細胞; Retinal Pigment Epithelium)を分化誘導し、その細胞を注入移植、もしくは細胞シートを作製し移植することで、滲出型・萎縮型両方の治療を目指しています。

(2) 代謝性肝疾患(開発コード: HLCL041)

肝臓は体内の化学工場と呼ばれるほど多くの働きを担っています。その中の一つとして、有害なアンモニアを無害な尿素に代謝し解毒する働きがありますが、先天的にこの代謝に異常がある症状が尿素サイクル異常症です。

同社は横浜市立大学の武部貴則教授と共同で、iPS細胞から作製した3次元肝臓原基を用いた治療法の開発を進めています。

(3)固形がん(開発コード: HLCN061)

固形がんを対象とした、他家iPS細胞由来ナチュラルキラー(NK)細胞を用いたがん免疫細胞療法製剤の開発が進められています。遺伝子編集技術により特定機能を高めたiPS 細胞由来NK細胞の開発が行われており、日本と米国を対象地域として進められています。

 

②体性幹細胞再生医薬品

2016年1月に米国企業のAthersys, Inc (アサシス社)より骨髄由来間葉系幹細胞製品MultiStem®を導入しました。現在、日本国内でこの幹細胞製品(社内開発コード HLCM051)を用いた急性期脳梗塞および急性呼吸窮迫症候群に対する臨床試験が進められています。

(1) 急性期脳梗塞

脳梗塞とは、脳の動脈が詰まることで脳の神経細胞が壊死し、運動障害,感覚障害,言語障害といった深刻な後遺症が残る疾患です。脳へのダメージの原因として、酸素・栄養不足による一次障害と、その後。炎症性細胞が患部に動員されることにより引き起こされる炎症による二次障害があります。

同社の急性期脳梗塞治療は、HLCM051を静脈投与することで脾臓からの炎症細胞の動員を抑制,かつ抗炎症細胞を動員させ、脳梗塞患部での二次障害を軽減させるメカニズムとなっています。

アセシス社が米英にて実施した第II相臨床試験においては、脳梗塞発症後36時間以内にMultiStem®を投与することで良好な試験結果が得られています。

現在、ヘリオス社により日本国内で第II/III相臨床試験が行われており、2021年前半~半ばに完了予定となっています。

(2) 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)

急性呼吸窮迫症候群(ARDS; Acute Respiratory Distress Syndrome)とは、重症肺炎,敗血症,外傷などの際に放出された炎症性細胞が、肺に集積し肺を攻撃することで引き起こされる重度の呼吸不全です。発症後の死亡率が約25~40%と非常に高い、重篤な疾患です。日本国内の患者数は約1万2000人とされています。

同社の急性呼吸窮迫症候群治療は、間葉系幹細胞の炎症抑制効果により、肺での炎症を抑制し呼吸不全を改善することを目的としています。

アセシス社が米英にて実施した第I/II相臨床試験において、MultiStem®投与により改善傾向が見られています。

現在、ヘリオス社により日本国内で臨床試験が進められています。

 

開発体制

同社では、細胞医薬品の開発・製造の推進のために複数の関連会社を立ち上げています。

・株式会社サイレジェン:iPS細胞由来RPE細胞医薬品の製造や販売促進を目的に、大日本住友製薬株式会社と合弁で2014年2月に設立。大日本住友製薬の再生・細胞医薬製造プラント(SMaRT)内で、iPS細胞由来RPE細胞の製造体制の準備を開始。

・器官原基創生研究所:臓器原基技術の実用化の加速を目的に2018年6月設立。本技術の発明者である谷口英樹教授、武部貴則教授を取締役に就任。臓器原基技術の実用化に向け、複数の臓器のパイプライン化や創薬スクリーニング等の研究活動を進める。

・Healios NA, Inc.:北米における情報発信・情報収集,アカデミアや企業との提携の強化を目的に、2018年2月に設立。

また、以下の企業と業務提携や投資等の関連があります。

【業務・資本提携】

株式会社ニコン:同社の画像解析技術を活用した品質評価システムや、細胞受託開発・生産事業といったノウハウや技術を取り込み活用することを目的に、2017年2月に提携しました(2019年7月に拡大)。骨髄由来間葉系幹細胞製品(HLCM051)の再生医療等製品承認取得後は、同社の子会社であるニコン・セル・イノベーション社が製造を行います。

【戦略的投資】

株式会社ガイアバイオメディシン:ナチュラルキラー細胞による癌免疫細胞療法の開発を行う同社に戦略的投資を実施し、株式の一部および新株予約権の一部を取得しています。

追記:2019年9月19日に、ガイアバイオメディシン社との資本関係解消が発表されました。

 

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