再生医療ベンチャー

再生医療ベンチャー#10 ブライトパス・バイオ

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〇がんペプチドワクチンを中心に、がん免疫療法の開発を行うバイオベンチャー

〇iPS-NKT細胞療法やHER2 CAR-Tといった再生医療等製品も開発

〇ネオアンチゲンを標的とした個別化がんワクチンを開発中

会社名 ブライトパス・バイオ株式会社
BrightPath Biotherapeutics Co., Ltd
所在地 東京都千代田区麹町2-2-4 麹町セントラルビル7F
代表者 代表取締役CEO 永井健一
設立 2003年5月8日
上場 2015年10月22日 マザーズ (4594)

【会社概要】

がん免疫療法の研究開発を行うバイオベンチャーです。2003年にがんペプチドワクチンの研究開発を行う久留米大学発バイオベンチャーとして創立されました(当初の社名は株式会社グリーンペプタイド)。2015年にマザーズ市場に上場を果たし、2017年に社名を現在のブライトパス・バイオ株式会社に変更しています。

現在は、がんペプチドワクチンを中心に、iPS細胞を用いたがん免疫療法の開発や完全個別化がんワクチンの開発等、幅広いがん免疫療法の開発を展開しています。

社名のブライトパスは、Bright (輝く) と Path (道筋)を合わせたもので、以下の3つの思いが込められています。

1. がんの克服に取り組む患者さんとそのご家族、医師、医療従事者を始めとするすべての人達にとっての「希望の光」となるようながん治療薬を創製したいという思い

2. 未解明の領域を、同社の「サイエンスの光」で照らすことによって、がん治療革新の一翼を担いたいという思い

3. 前人未踏の領域に挑む世界中の研究者・医師にとって、がん免疫療法が進むべき方向性(Path)を鮮やか(Bright)に指し示すリーダーに、我々がなるという決意

【事業内容】

ブライトパス社では、以下のプロジェクトが進められています。この中で、②iPS誘導NKT細胞と③HER2 CAR-Tが再生医療(再生医療等製品)に該当します。

パイプライン

①がんペプチドワクチン/複合的がん免疫療法

ブライトパス社では、当初単剤ペプチドワクチンとして12種ペプチドワクチンITK-1を開発し、富士フィルム社にライセンスアウトしました。しかしながら、前立腺がんを対象とした第III相臨床試験において主要評価項目を達成することができず、2018年に開発が中止されています。

ITK-1に続くがんペプチドワクチンとして、4種ペプチドワクチンGRN-1201の開発が進められています。本ペプチドワクチンは単剤ではなく、免疫チェックポイント阻害抗体医薬との併用による複合的がん免疫療法としての開発が進められており、2019年9月現在、米国において、非小細胞肺がんを対象とした第II相臨床試験とメラノーマを対象とした第I相臨床試験が進められています。臨床試験では第II相より免疫チェックポイント阻害抗体医薬の併用が行われ、本試験ではキイトルーダ(ペムブロリズマブ; PD-1阻害抗体)が用いられています。

②iPS誘導NKT細胞

ナチュラルキラーT(NKT)細胞由来iPS細胞から再分化誘導したNKT細胞を用いた他家がん免疫療法です。

NKT細胞は、NK細胞とT細胞の両方の性質を持つ細胞で、高い殺傷能力を有すると同時に他の免疫細胞を活性させる働きもある、強力な免疫作用を有する細胞です。がん免疫療法においては高い腫瘍効果が期待できる一方で、その存在割合は血液中のT細胞の1,000~10,000個に1つと非常に低く、また増殖力も低いため、治療に必要な細胞を得ることが難しいという問題点がありました。

そこで、理化学研究所免疫器官形成研究グループの古関明彦ディレクターらは、NKT細胞からiPS細胞を誘導し、さらにNKT細胞の幹細胞を分化誘導し大量に増殖させた後にNKT細胞へと分化させることで、大量のNKT細胞(iPS-NKT細胞)を得ることのできる技術を開発しています。さらに、理化学研究所免疫細胞治療研究チームの藤井眞一郎チームリーダーらと共同して、iPS-NKT細胞の抗腫瘍効果動物試験で検証しています。理化学研究所と千葉大学病院のグループにより治験が進められており、2020年12月に第一例目の投与が完了しています。ブライトパス社はこの技術をパイプラインとして導入しています。

③HER2 CAR-T

信州大学の中沢洋三教授と京都府立医科大学の柳生茂希助教らが開発したHER2抗原を認識するCAR-T細胞で、PiggyBacトランスポゾン法により、ウイルスベクターを使わずに作製する点に特徴があります。

通常のCAR-T細胞の多くはウイルスベクターを用いた遺伝子導入により作製されますが、細胞が数日~数週間で疲弊してしまい、治療効果の持続性の観点から、免疫細胞に抑制がかかる固形がんへの適応に課題がありました。そこで同社は、中澤教授らと共同でCAR-T細胞培養方法を開発し、前述の非ウイルス導入法と組み合わせてCAR-T細胞を作製することで、幹細胞性を有するStem cell memory T cell (TSCM)を得ることに成功しています。この細胞を治療に用いることで、より長期持続的な抗腫瘍効果が期待されます。

固形がんである骨肉腫を対象とし、2020年度中の医師主導治験開始が計画されています。

④ネオアンチゲン/完全個別化ワクチン

がん細胞はゲノムに変異が多く起こることで生じますが、変異した遺伝子情報を元に発現した変異抗原はネオアンチゲンと呼ばれ、がん細胞治療の標的として注目されています。

同社はこのネオアンチゲンを標的とし、患者個人のゲノム変異を次世代シーケンサー解析により特定し、各個人に最適ながんペプチドワクチンを製造・投与する個別化ワクチン療法の開発を進めています。

現在はまだ基礎研究の段階ですが、国立がん研究センター、東京大学、神奈川県立がんセンター、三重大学と共同研究が進められ、実用化が期待されています。

⑤抗体医薬

PD-1,CTLA-4といった免疫調整因子に対する抗体医薬の研究開発も社内で進められています。

 

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