〇独自の薬剤封入細胞(hAP細胞)プラットフォーム開発を行うベンチャー企業
〇心筋梗塞を対象としたスタチンhAP細胞をはじめ複数のパイプライン
〇産官学の連携体制の下でのhAP細胞開発
【会社情報】
会社名 | オーチャード・バイオ株式会社 Orchard Bio Inc |
所在地 | 兵庫県神戸市中央区御幸通8丁目1番6号 神戸国際会館22F |
代表者 | 代表取締役 植松哲生 |
設立 | 2021年3月22日 |
上場 | 非上場 |
【企業理念/ミッション】
【会社概要】
低分子化合物薬剤を封入したhAP細胞を用いた独自のDDSプラットフォームの開発を行っているベンチャー企業です。投与されたhAP細胞は体内の損傷部位に集積し低分子化合物を放出することで、低分子化合物と細胞の相乗効果により組織の修復の促進が期待されます。
同社では心筋梗塞を対象としてシンバスタチンを脂肪由来間葉系幹細胞に封入したスタチンhAP細胞をはじめ複数のパイプラインの開発が進められています。また、hAP細胞プラットフォームについてのアステラス製薬との共同研究をはじめ、塩野義製薬およびホソカワミクロンと連携した細胞製造開発、さらに愛知学院大学、神戸医療産業都市推進機構からの支援といった産官学の連携体制の下で開発が進められています。
【事業内容】
hAP(ハップ)細胞を用いたDDSプラットフォーム
hAP (holding Active Pharmaceutical ingredient)細胞は低分子化合物の薬剤と細胞を組み合わせたハイブリッド再生医療製品です。薬剤を生体吸収性ポリマー(PLGA)ナノ粒子に封入し、細胞に取り込ませることで作製されます。
間葉系幹細胞などの細胞は炎症部位や損傷部位に集積する性質があるため、それらの細胞を基に作製したhAP細胞を投与することで目的の部位に薬剤を送達することのできるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)として利用することができます。損傷部位に集積したhAP細胞は薬剤を放出し、薬剤による薬効と細胞による組織修復の相乗効果により組織修復の促進が見込めます。また薬剤を効率的に目的部位に運ぶことができるため、高い効果とともに副作用を抑えることが期待され、これまで毒性の問題で医薬品として開発されなかった低分子化合物を開発対象とすることができる可能性もあります。
開発パイプライン
1. スタチンhAP細胞
オーチャード・バイオ社では、シンバスタチンを脂肪由来幹細胞に封入したスタチンhAP細胞の開発を進めています。シンバスタチンはコレステロール合成系の酵素であるHMG-CoA還元酵素の阻害剤であり、高脂血症治療に用いられる薬剤です。また抗炎症作用や血管新生など様々な生理的効果が知られています。
同社では、重症心不全を伴う心筋梗塞後患者を対象としたスタチンhAP細胞の開発を進めています。封入されたシンバスタチンは時間経過とともに徐々に放出され、最初の1日で約50%、残りは約2週間かけて放出されます。またスタチンhAP細胞自身においても、FGF-2, IGF-1といった組織再生に関わる成長因子の発現が高まることが確認されています。このスタチンhAPを心筋梗塞モデルマウスに投与したところ、シンバスタチン封入PLGAナノ粒子もしくは脂肪由来幹細胞をそれぞれ単独投与した場合と比較して、良好な心筋再生が観察されています。
2. ミノキシジルhAP細胞
間葉系幹細胞は血管新生を誘導することが知られていますが、間葉系幹細胞単体では虚血性疾患に対する十分な治療効果を得ることは困難です。
そこで同社では、間葉系幹細胞にミノキシジルを封入したミノキシジルhAP細胞の開発を進めています。ミノキシジルは血管拡張および血管新生作用があることが知られており、ミノキシジルhAP細胞では通常の間葉系幹細胞より高い血管新生促進能が確認されています。
現在、虚血系疾患や脱毛症を対象としてミノキシジルhAP細胞の開発が進められています。
3. シクロスポリンhAP細胞
シクロスポリンはリンパ球に特異的に作用する標準的な免疫抑制剤です。ただし体内での安定性が低く、また毒性が強いため、投与に際しては体内濃度のモニタリング管理が必要となります。
そこで同社では、末梢血単核球にシクロスポリンを封入したシクロスポリンhAP細胞の開発を進めています。シクロスポリンhAP細胞では、シクロスポリンは封入された状態では比較的安定であり、かつ徐放されることで体内濃度を一定に保つことが期待できます。細胞を用いた実験では、シクロスポリンを直接添加した場合に比べて1/10以下の容量で同等の免疫抑制効果が得られることが確認されており、現在、自己免疫疾患を対象として開発が進められています。
hAP細胞プラットフォーム
適切な細胞や封入する薬剤の組み合わせを選択することで、hAP細胞は様々な疾患や組織に対応することができます。同社ではhAP細胞プラットフォームについての共同開発や開発受託を行っています。
2022年よりアステラス製薬と共同開発を進めています。この共同開発においてはアステラス製薬より提供された薬剤と動物脂肪幹細胞を組み合わせたhAP細胞の開発を行っており、細胞での性能評価試験を終え動物モデルでの有効性検証試験が進められています。
hAP細胞開発連携体制
hAP細胞の開発については、塩野義製薬、ホソカワミクロン(hAP細胞製造)、アステラス製薬(共同開発)、愛知学院大学(アドバイザー)、神戸医療産業都市推進機構(事業開発支援)と、産官学の連携体制として進められています。
※オーチャード・バイオ株式会社様の許可を得て、企業ロゴおよびウェブサイト画像を使用しています。