〇乳歯歯髄幹細胞(SHED)の安定供給事業と細胞治療開発を行う企業
〇キッズウェル・バイオ社から子会社として独立
〇脳性麻痺や虚血性骨疾患を対象とした細胞治療の開発
【会社情報】
会社名 | 株式会社S-Quatre (エスカトル) S-Quatre Corporation |
所在地 | 本社:東京都中央区新川一丁目2番12号 研究所:札幌研究所 (北海道大学内) 東京ラボ (三井リンクラボ新木場2) |
代表者 | 代表取締役社長 三谷 泰之 |
設立 | 2024年4月1日 |
上場 | 非上場 (キッズウェル・バイオ株式会社の100%子会社) |
【企業理念/ミッション】
【会社概要】
乳歯歯髄幹細胞(SHED)を用いた細胞治療の開発を行うベンチャー企業です。キッズウェル・バイオ社の細胞治療事業を担う子会社として設立されました。
抜歯した乳歯から採取したSHEDの原料安定供給システム「S-Quatre®:SHED Source Supply Service」(“Quatre”はフランス語で「4」の意)を基盤とし、遠隔期(慢性期)の脳性麻痺や腸管神経節細胞僅少症といった小児疾患や、難治性骨疾患に対する細胞治療の開発が進められています。
【事業内容】
乳歯歯髄幹細胞 (SHED)
S-Quatre社の基盤事業は、抜歯した乳歯から採取した乳歯歯髄幹細胞(SHED; Stem cells from Human Exfoliated Deciduous teeth)の安定供給システムと、SHEDを用いた新規治療法の開発です。
歯髄幹細胞の作製技術は、株式会社セルテクノロジーを元としています。S-Quatre社の親会社であるキッズウェル・バイオ社(当時の社名は株式会社ジーンテクノサイエンス)がセルテクノロジー社を子会社化することで歯髄幹細胞事業を導入しました(その後セルテクノロジー社は2020年に同仁グループに譲渡)。その後、キッズウェル・バイオ社の再生医療事業を独立させる形で2024年にS-Quatre社が設立されました。
同社の社名の由来にもなっているSHED原料安定供給システム「S-Quatre®:SHED Source Supply Service」(“Quatre”はフランス語で「4」の意)は、乳歯のドナー候補の登録、ドナースクリーニング、GMP基準下でのマスターセルバンク製造までのワンストップのシステムです。
製造されたマスターセルバンクを活用した細胞治療治療の開発を行うとともに、細胞医薬の原料として製薬企業や研究機関に提供する取り組みも進められています。
開発パイプライン
S-Quatre社ではSHEDおよび遺伝子改変SHEDを用いた複数のパイプラインが進行中です。
脳性麻痺(遠隔期)
脳性麻痺は、出生前、分娩中、出生直後に酸素欠乏や感染などが原因で脳に損傷が起こることで生じる障害で、腕や脚の麻痺をはじめ、知的障害、視覚障害などを併発することもあります。国内では新生児の約500人に1人の割合で起こるとされています。
薬剤の投与やボツリヌス毒素治療により筋肉の緊張を和らげる治療や、理学療法,作業療法によるリハビリテーションが行われていますが、根治的な治療法はありません。 S-Quatre社ではSHED投与による遠隔期(慢性期)の脳性麻痺の治療法の開発を進めています。名古屋大学との共同研究での慢性期脳性麻痺モデル動物実験において、SHEDを静脈内投与することで脳神経の新生/再生が促進され、運動機能障害が改善されることが確認されています。
名古屋大学医学部附属病院において自家SHED単回投与の安全性、忍容性を検討する臨床試験が2023年より行われています。
S-Quatre社では2025年度末を目標に他家SHEDを用いた第1/2治験を計画しており、その準備が進められています。
骨疾患
難治性の骨疾患である虚血性骨疾患の治療法の開発も進められています。虚血性骨疾患は骨への血流が減少することで骨代謝が停止し、骨が壊死する疾患です。
北海道大学との共同研究において、重度の難治性骨疾患モデルラットの骨欠損部位にSHEDと骨充填剤を組み合わせて埋植した結果、血管新生が見られ高い骨再生効果が確認されています。
S-Quatre社は、獨協医科大学(共同研究責任者が北海道大学から獨協医科大学へ異動したため)、医療用セラミックス・金属製インプラントの製造・販売を行うHOYA Technosurgical社と共同研究契約を締結し、代表的な虚血性骨疾患である特発性大腿骨頭壊死症(国内患者数:約2.3万人)を対象とする治療法の開発を進めています。
これらのほかにも希少疾患である腸管神経節細胞僅少症に対する治療法を持田製薬との協業の下で進められています。