再生医療ベンチャー

再生医療ベンチャー#40 PuREC

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〇高品質な間葉系幹細胞(REC)の分離技術を独自技術とする、島根大学発のベンチャー

〇低ホスファターゼ症を対象とした再生医療の実用化を進めている

〇名古屋大学と共同で、AI による細胞品質管理システムの研究も進行中

 

【会社情報】

会社名 PuREC株式会社
所在地 島根県出雲市塩冶町89-1 島根大学医学部内
代表者 代表取締役社長 髙橋英之
設立 2016年1月5日
上場 非上場

【会社概要】

高増殖能・高分化能を有する高品質な間葉系幹細胞(REC)の分離技術を独自技術とする、島根大学発のバイオベンチャーです。島根大学医学部の松崎有未 教授の開発したREC分離技術の実用化を目的に設立され、現在、RECを用いた低ホスファターゼ症の再生医療の開発を行っており、RECを用いた医師主導治験が島根大学医学部附属病院にて進められています。2019年6月に富士フィルムと、開発・製造・販売ライセンス導入の優先交渉権を含めた資本・業務提携を結んでおり。また、RECを用いた関節疾患の新規治療について持田製薬と、脊椎疾患の新規治療について北海道大学および持田製薬と、それぞれ共同研究を進めています。

また、名古屋大学と共同して、AIによるRECの品質検査の研究も進めています。

【事業内容】

コア技術:高純度間葉系幹細胞REC

PuRec社の独自技術は、間葉系幹細胞の集団から高増殖能・高分化能を有する高品質な間葉系幹細胞(Rapidly Expanding Clone/Cell: REC)を分離する技術です。

従来の間葉系幹細胞の採取においては、骨髄等から得られた細胞を培養し、出現したコロニー形成細胞を回収して間葉系幹細胞を得ています。しかしながら、この方法では、分化能が低い、あるいは分化能を失った細胞の混入が避けられず、高増殖能・高分化能を有する細胞は1000個中1~3個という低頻度でしか含まれていませんでした。

島根大学医学部の松崎有未 教授(PuREC社取締役)らは、LINGFRとThy-1の2つの細胞表面マーカーが陽性の間葉系幹細胞が、高増殖能と高分化能を維持していることを見出し、これらを指標に分離することで、高純度な高品質間葉系幹細胞を得ることに成功しています。

REC分離方法の概要、およびREC増殖能
(出典:Mabuch et al. Stem Cell Reports. 1:152-165 (2013))

RECは骨髄のみでなく、末梢血,胎盤絨毛膜・歯髄等からも分離できることが確認されています。

PuREC社は、このRECを用いた再生医療の実用化を目指しています。

パイプライン

①重症低ホスファターゼ症

重症低ホスファターゼ症は、先天的なアルカリフォスファターゼ(ALP)の活性低下によって骨の石灰化が阻害される遺伝性疾患で、日本国内に100~200人の患者がいると言われています。重症度や発症時期によってさらに6つの病型に分類されますが、重症な場合、肋骨等の胸郭の低形成による呼吸障害により、乳児期になくなる場合もあります。

島根大学医学部は2010年に、生後6ヶ月以内に発症し致死的な経過をとる乳幼児に対して、他家(患者家族)の骨髄および間葉系幹細胞を移植する「重症低ホスファターゼ症に対する骨髄移植併用同種間葉系幹細胞移植」の臨床試験を産業総合研究所と共同で実施し、2症例に対して移植を行っています。その結果、2例ともで呼吸症状の改善および骨石灰化の改善が見られています。

しかしながら、どちらの症例も血清ALP値は低値のままで、骨石灰化も健常者と同等にまでは達しておらず、移植に用いる細胞としてさらに高品質な間葉系幹細胞が必要とされています。そこでPuREC社では、RECを用いて重症低ホスファターゼ症を対象とした再生医療の実用化を進めています。RECを用いた医師主導治験が、2021年7月より島根大学医学部附属病院において進められています(2021年7月15日付 AMEDプレスリリース)。この治験の治験製品はJ-TECで製造されます。

2019年6月に富士フィルムと業務提携契約を締結し、また第三者割当増資として3億円の出資を受けています。この提携により富士フィルム社は、PuREC社の低ホスファターゼ症を対象とする再生医療製品の開発・製造・販売ライセンス導入の優先交渉権を取得しています。

再生医療用細胞の品質管理システム研究

名古屋大学大学院創薬科学研究科の加藤竜司 准教授および株式会社イノテックと提携して、再生医療用細胞の品質管理システムの開発を行っています。

加藤准教授のグループとイノテック社は、加藤准教授のグループが進める細胞形態による細胞の品質診断技術と、イノテック社の画像処理技術,クラウド型ソフトウェア技術を用いて、細胞品質管理システム「AiCELLEX」を開発しています。

PuREC社は、イノテック社と提携しこのシステムを導入するとともに、加藤准教授とともにAIによるRECの品質検査高度化の調査研究」を進めています。この研究は、NEDOの優れたAIベンチャー企業の研究テーマ(健康、医療・介護分野)の最優秀賞に選出されています。

「AIによる高純度間葉系幹細胞の品質検査高度化の調査研究」のイメージ
(出典:NEDO ”優れたAIベンチャー企業の研究テーマ6件を採択” )

 

※PuREC株式会社様の許可を得て、企業ロゴおよびウェブサイト画像を使用しています。

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