再生医療ベンチャー

再生医療ベンチャー#62 リジェネフロ

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〇iPS由来ネフロン前駆細胞による腎疾患の治療開発を行う京都大学発ベンチャー

〇実用化に向けて、高効率分化誘導、濃縮純化法、拡大培養法を確立

〇腎臓オルガノイド、EPO産生細胞、尿管芽細胞の誘導にも成功

 

【会社情報】

会社名 リジェネフロ株式会社
RegeNephro Co.,Ltd.
所在地 京都市左京区聖護院川原町53 京都大学大学院 医学研究科 MIC棟
代表者 代表取締役社長 石切山 俊博
設立 2019年9月20日
上場 非上場

 

【会社概要】

iPS細胞から誘導したネフロン前駆細胞を用いた腎疾患治療の開発を行う、京都大学発ベンチャーです。長船(おさふね)健二 京都大学iPS細胞研究所教授らが開発したネフロン前駆細胞分化誘導技術を基に、「KYOTO発起業家育成プログラム」により設立されました。2022年の臨床試験開始、2027年に製造販売取得を取得する計画で開発が進められています。

2020年6月に、富士フィルム株式会社から1億円の出資を受けるとともに、再生医療製品の開発・製造受託と創薬支援用細胞の販売に関する業務提携契約を締結しています。同時に、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)からの出資等、総額3億6000万円(上記富士フィルム含む)の資金を調達しています。また、2020年9月に、iPS細胞由来腎前駆細胞の製造プロセス開発を目的にキリンホールディングスと共同研究契約を締結しています。

2020年2月に、社名が”RegeNephron株式会社”から現在の”リジェネフロ株式会社”に変更されています。

 

【事業内容】

iPS由来ネフロン前駆細胞による腎疾患治療

(出典:リジェネフロ株式会社 事業案内)

腎臓の主な役割は、血液をろ過し、余分な水分や老廃物等を尿として排泄することです。血液は糸球体と呼ばれる部位でろ過され、尿細管に排出されます。この糸球体と尿細管からなる構造をネフロンと呼び、腎臓は約100万個のネフロンから構成されています。

このネフロンに障害が生じ、腎臓のろ過機能が低下した状態が腎疾患ですが、腎臓は再生しないため、症状が進行し慢性腎不全になった場合、生涯人工透析を受け続ける必要があります。現在、このような腎疾患に対する根治的な治療法は腎臓移植しかありませんが、国内に透析を必要とする患者が約33万人いるとされる一方で、年間の腎移植は約1700例にとどまっており、ドナー不足が大きな問題となっています。

①治療スキーム

(出典:リジェネフロ株式会社 事業案内)

このような腎疾患に対して、リジェネフロ社はiPS細胞から誘導したネフロン前駆細胞を利用した治療法の開発を進めています。

②ネフロン前駆細胞分化誘導技術

腎臓発生のモデル (出典:ネフロン前駆細胞を用いた腎疾患に対する再生医療の開発(荒岡利和))

ネフロンの基となるネフロン前駆細胞は、成体には存在しないとされています。長船教授(同社 取締役最高科学顧問は)、2006年にマウス胎児中にネフロン前駆細胞を発見しました(Osafune et al. Development, 133;151-161(2006))。

さらにその後、ヒトiPS細胞からのネフロン前駆細胞分化誘導方法を確立し、得られたネフロン前駆細胞を急性腎障害モデルマウスの腎被膜に移植することで、腎障害を軽減することに成功しました(Toyohara et al. Stem Cells Trans Med, 4;980-992(2015))/(CiRAニュース『ヒトiPS細胞由来の腎前駆細胞をつかった細胞移植で急性腎障害(急性腎不全)マウスに効果』)。

長船教授らは実用化に向けて、より効率的な誘導方法や、ネフロン前駆細胞に特異的な細胞表面マーカーを同定し、それを用いたネフロン前駆細胞の濃縮純化技術、さらにネフロン前駆細胞の未分化能を維持したまま100倍以上増殖させることができる拡大培養法を開発しています。

③治療メカニズム

同社は、このiPS由来ネフロン前駆細胞を同様にヒトの腎被膜に移植する治療法の開発を行っています。この治療法のメカニズムとしては、移植したネフロン前駆細胞は患者腎臓内でネフロンを構成するのではなく、そこから分泌されるHGF, VEGF-A, Angiopoietin-1等の因子が患者のネフロンを回復させるる、パラクライン効果と考えられています。(Toyohara et al. Stem Cells Trans Med, 4;980-992(2015))。 根治的な治療ではなく、定期的な移植を行いながら腎機能の低下を防ぐコンセプトの治療法となります。現段階では、1回の治療費を年間の人工透析の治療費と同程度で実施し、2,3年の間腎機能の低下を抑制しその間人工透析を不要とすることで、国内で年間約1兆6000億円と言われる人工透析医療費の低減を狙っています。2022年の臨床試験開始、2027年に製造販売取得を取得する計画で開発が進められています。(参照元:日本経済新聞 2019年9月19日付 『iPS 腎臓病治療で新会社 京大発「事業の種」芽吹く』)。

 

腎臓オルガノイドの作製技術

(出典:リジェネフロ株式会社 基盤技術 腎臓オルガノイドの作製技術)

長船教授らは、ヒトiPS細胞由来のネフロン前駆細胞から糸球体と尿細管を含む腎オルガノイドの作製に成功しています。この腎臓オルガノイドを用いて新薬の腎臓への副作用の評価や、また疾患特異的iPS細胞から作製することで病態解析や創薬スクリーニングへの応用が考えられています。

 

その他の腎臓関連細胞研究開発

①エリスロポエチン(EPO)産生細胞

血液のろ過以外の腎臓の役割として、赤血球を増やすホルモンであるエリスロポエチン(EPO)を作る働きがあります。腎機能が低下し、EPOの分泌が少なくなると、赤血球が不足し貧血症状が起こります。

長船教授らは、iPS細胞からEPO産生細胞を誘導し腎性貧血モデルマウスに移植することで、血液中の赤血球数を増加させることに成功しています。新しい腎性貧血の治療方法として期待されています。

②尿管芽細胞

(出典:リジェネフロ株式会社 基盤技術 尿管芽細胞)

長船教授らは、iPS細胞から尿管芽細胞の誘導にも成功しています(Mae et al. Biochem Biophys Res Commun, 495;954-961(2018))。ネフロン前駆細胞とともに用いることで、腎臓臓器の再構築が期待されます。

 

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