再生医療ベンチャー

再生医療ベンチャー#66 バイオチューブ

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〇生体内組織形成術(iBTA)による自家移植用組織体の開発を行うバイオベンチャー

〇下肢動脈バイパス用人工血管作製用鋳型が、先駆け審査指定制度」の対象品目に指定

〇狭窄透析シャント血管に対するバイオチューブによるバイパス形成術の臨床試験、重症下肢虚血患者を対象としたバイオチューブ再生血管の医師主導治験、糖尿病性足潰瘍患者を対象にバイオシート多能性幹細胞集積体の医師主導治験が進行中。

 

【会社情報】

会社名バイオチューブ株式会社
所在地本社:東京都中央区銀座1丁目22番11号 銀座大竹ビジデンス2階
大阪ラボ:大阪府吹田市千里山東3丁目10番1号 関西大学イノベーション創生センター302号室
代表者代表取締役CTO 中山泰秀
設立2017年5月30日
上場非上場

 

【会社概要】

生体内組織形成術(iBTA)による自家移植用組織体の開発を進める、国立循環器病研究センター発のベンチャーです。患者皮下にプラスチックや金属製の「鋳型」を埋め込むことでチューブ状組織(バイオチューブ)やシート組織(バイオシート)を形成させ、取り出した後に移植用組織として利用することを目指しています。当時、国立循環器センター 医工学材料研究室 室長であった中山泰秀 同社CTOが考案した技術が基になっています。

開発製品の1つである「下肢動脈バイパス用人工血管作製用鋳型(仮称)」が、重症下肢虚血の治療を対象として「先駆け審査指定制度」の対象品目(医療機器)に指定されています。

同社の開発製品は、再生医療等製品や特定細胞加工物ではなく医療機器にあたりますが、「生体の持つ自己再生能力を利用して、損傷した組織の機能を回復させる」という広義の意味での再生医療にあてはまるため、再生医療ベンチャーとして紹介します。

 

【企業理念/ミッション】

 

【事業内容】

コア技術:生体内組織形成術(iBTA)

(出典:バイオチューブ株式会社ウェブサイト iBTA技術とは)

同社のコア技術は、生体内組織形成術(iBTA; in Body Tissue Architecture)です。生体内に異物が埋入した場合、その周囲に線維芽細胞が集積しコラーゲンを分泌し異物を覆う、被膜化(カプセル化)という生体反応が起こります。iBTA技術ではこの現象を利用して、移植組織として用いることのできる「自家移植用組織体」を作製します。つまり、患者の皮下にプラスチックや金属性の鋳型を1,2ヶ月間埋め込むことで、患者自身のコラーゲンから成る組織体を形成させます。この組織体を取り出し鋳型から取り外すことで、鋳型の形状に応じた組織体を得ることができます。

iBTA技術の可能性 (出典:バイオチューブ株式会社ウェブサイト iBTA技術とは)

鋳型の形状により、管状の組織体(バイオチューブ)や、膜状組織(バイオシート)が得られます。バイオチューブは血管等、バイオシートは硬膜、角膜、心筋等の欠損修復に、さらに心臓弁を形成するためのバイオバルブの開発も進められています。

 

バイオチューブ

同社の社名にもなっている通り、管状組織体バイオチューブの開発に最も注力しています。これまでに動物実験において、内径0.6mmのマイクロバイオチューブを含む様々な口径や厚みのバイオチューブの作製に成功しています。また、渦巻き型の鋳型を用いることで、20cmを超える長さのバイオチューブの作製にも成功しています。

バイオチューブのバリエーション (出典:中山ら,日本小児循環器学会雑誌Vo.32;No.3 (2016))
長尺バイオチューブ (出典:バイオチューブ株式会社ウェブサイト バイオチューブとは)

バイオチューブをビーグル犬の大腿動脈に移植すると、内腔にaSMA陽性細胞、および血管内皮細胞から成る血管壁の再構築が起こり、血栓等の付着が起こらないことが確かめられています。ビーグル犬では、最長で8年間の長期開存が得られており、その間、瘤化や狭窄は見られていません。また幼犬に移植した結果、移植したバイオチューブから成る血管も成長し、移植1年後に口径が最大約1.5倍に拡径、長さも最大約1.5倍に延伸しており、体の成長に合わせバイオチューブも成長することが認められています。

 

バイオシート・バイオバルブ

同様に、バイオシートやバイオバルブの開発も進められています。

バイオシートは、バイオチューブを切り開くことで作製されます。ヤギで作製した厚さ0.5mmのバイオシートは、ヤギ心膜に比べて優れた力学的特性を有しており、ラットを用いた動物実験では、心筋欠損部にパッチすることで心筋再生の足場として機能することが確認されています。

バイオバルブは、3Dプリンターにより作製された鋳型を用いて作製されます。ヤギにApico-Aortic Bypass (左室心尖部-下行大動脈バイパス)として移植した結果、バイオチューブとどうようにaSMA陽性細胞の侵入が認められ、半年以上にわたって機能することに成功しています。

 

開発状況

現在、以下の疾患について研究開発が進められています。

①透析シャント血管バイパス

人工透析では、大量の血液を取り出す必要があるため、動脈と静脈を吻合した「シャント」と呼ばれる血管を作ります。

透析シャント血管とその狭窄 (出典:医療法人社団苑風会 苑風会病院ウェブサイト 人工透析について)

しかしながら、様々な理由によりシャント血管が狭窄することがあります。そのような症例に対して、バイオチューブで人工血管を作製し、狭窄部分にバイパスを形成する臨床試験が進められています。現在、2名の患者に移植が行われ、経過を観察中です。

 

②重症下肢虚血

動脈硬化による血行不良が進行した状態が重症下肢虚血で、下肢の切断や死亡につながる重篤な疾患です。詰まった血管に対して人工血管で置換する術法がありますが、膝より下の末梢動脈で使用可能な5mm以下の小口径の人工血管がなく、下肢虚血のに適用することはできませんでした。同社のiB TA技術ではそのような小口径のバイオチューブの作製が可能であり、バイオチューブをバイパス用人工血管として使用することで治療効果が期待されます。バイパス血管として使用するには30cm以上の長さが必要なため、現在、ロング人工血管の開発が進められています。

この「下肢動脈バイパス用人工血管作製用鋳型(仮称)」は2018年に先駆け審査指定制度の対象品目に指定されており、現在、臨床試験へ向けて開発が進められています。

 

※バイオチューブ株式会社様の許可を得て、企業ロゴおよびウェブサイト画像を使用しています。

 

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