再生医療ベンチャー

再生医療ベンチャー#12 ステムリム

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〇”再生誘導医薬”という新しいコンセプトの医薬品の開発を行うバイオベンチャー

〇主要開発品HMGB1ペプチドは骨髄由来間葉系幹細胞の動員に作用

〇表皮水疱症,脳梗塞,心筋症を対象とした臨床試験が進行中

会社名 株式会社ステムリム
StemRim Inc
所在地 大阪府茨木市彩都あさぎ 7丁目7-15 彩都バイオインキュベータ 3階
代表者 代表取締役会長CEO 冨田 憲介 代表取締役社長COO 岡島 正恒
設立 2006年10月30日
上場 2019年8月9日 マザーズ (4599)

【会社概要】

“再生誘導医薬”という独自コンセプトの医薬品の開発を行うバイオベンチャーです。2006年に、大阪大学の玉井克人教授らが同定した骨髄多能性幹細胞動員因子を医薬品として開発することを目的に、前身となる株式会社ジェノミックスが設立されました。その後、2018年に現在の株式会社ステムリムに社名変更しています(社名の由来は、Stem cell Regeneration-Inducing Medicine = 再生誘導医薬)。2019年8月にマザーズ市場に上場を果たしています。冨田憲介CEOは、アンジェスMG株式会社(現 アンジェス株式会社),オンコセラピー・サイエンス株式会社に続いて、経営者として3社目のIPOとなります。

“再生誘導医薬”は現在の薬事法(薬機法)での分類上は再生医療等製品ではありませんが、「生体の持つ自己再生能力を利用して、損傷した組織の機能を回復させる」という広義の意味での再生医療にあてはまるため、再生医療ベンチャーとして紹介します。

【事業内容】

再生誘導医薬

“再生誘導医薬”とは、『生きた細胞や組織を用いることなく、医薬品の投与のみによって、再生医療と同等の治療効果を得られる新しい医薬品』です。つまり、投与により体内の幹細胞に働きかけ損傷組織の修復を行うことがコンセプトの医薬品です。

従来の再生医療では損傷を受けた組織に対して、生体から取り出した組織や細胞を体外で増殖培養や分化誘導等を施した後に生体に戻すことで組織の修復を図ります。しかしながら、培養時間の長さやコスト、培養中の細胞変質のリスク、組織採取時の侵襲性といった課題があります。そこで再生誘導医薬では、医薬品の投与により生体内の幹細胞を血中に動員,損傷部位に集積させることで、組織の修復を目指します。

主要開発パイプライン: HGMB1ペプチド

①HMGB1ペプチドとは

生体内タンパク質HMGB1(High Mobility Group Box 1)の生理活性ドメインペプチドです。HMGB1は活性化された樹状細胞やマクロファージ、また壊死細胞から放出されるタンパクで、免疫・炎症反応や幹細胞の動員を介した修復、止血等に関与します。

玉井教授は表皮水疱症(皮膚基底膜接着分子の遺伝子欠損にょり、皮膚表皮剥離を繰り返す遺伝性皮膚難病)の治療開発の研究の中で、剥離表皮が放出するHMGB1の血中濃度が上昇し、骨髄内間葉系幹細胞(MSC)を血中に動員すること、さらに動員されたMSCはケモカインSDF-1により剥離表皮部位に集積し、剥離表皮の再生に関わっていることを見出しました。

このHMGB1タンパクのMSC活性化ドメインの合成ペプチドがHMGB1ペプチド医薬です。HMGB1タンパク中の炎症反応を誘導するドメインを含まないため、副作用も起こりにくいと考えられます。 また、HMGB1ペプチドによって動員されるMSCは外胚葉性MSCであり、広く用いられている中胚葉由来MSCに比べて、より高い多能性を有しています。

②開発状況

2019年9月現在、大阪大学が主体となり表皮水疱症、心筋症(虚血性心筋症,拡張型心筋症)を対象に、塩野義製薬が主体となり脳梗塞を対象に臨床試験が進められています。表皮水疱症、脳梗塞は第II相臨床試験信仰中、心筋症は第II相臨床試験の準備中です。

表皮水疱症については、対象となる栄養障害型表皮水疱症の患者数が、日本全国で約200名、新規患者数が年間15名程度と少なく、大規模な第III相臨床試験を行うことが困難であり、一方で希少難治性疾患であり有効な治療法がない現状を踏まえて、第II相臨床試験の結果をもって医薬品の承認申請を行う見込みとなっています。

その他開発パイプライン

HMGB1に続く開発パイプラインとして、以下のプロジェクトが進められています。

①PJ2: 新規合成ペプチド

同社独自のMSC血中動員活性スクリーニング法により、いくつかの新規再生誘導医薬候補ペプチドを見出しています。その中の新規合成ペプチド(社内コードRIM3)について、潰瘍性大腸炎およびアトピー性皮膚炎への適応を目指し、現在、非臨床研究開発が進められています。

②PJ3: 生体由来再生誘導タンパク(第2世代再生誘導医薬)

MSCを集積させる作用をもつタンパク製剤です。損傷が大きい場合には、損傷部位より放出されるケモカイン(SDF-1)によりMSCが集積されますが、損傷部位が小さい場合、あるいは損傷から時間が経過している場合はSDF-1が放出されずMSCが損傷部位に集積されません。そこでこのタンパク製剤を併用することで、効率的な治療効果が期待されます。

現在、疾患モデル動物試験により、最適な適応症の選定が進められています。

③PJ4: 治療用自己細胞採取デバイス

数mmサイズのデバイス内にMSC誘因物質を組み込んだ、自己のMSCを採取するためのデバイスです。皮膚を数mm~数cm切開しデバイスを皮下に埋め込み、数日後に取り出して、デバイス内に集積したMSCを回収します。従来の骨髄採取によるMSC採取法と比較すると、患者の負担が著しく軽減されます。

現在、難治性潰瘍骨軟骨性疾患への適応を目指し、非臨床研究開発が進められています。

④PJ5: 幹細胞遺伝子治療

遺伝子病の治療として、細胞誘導医薬により動員されたMSCを採取し、正常な遺伝子を導入後に移植する治療法です。本治療法は厚生労働省の定める再生医療等に該当します。

ヒトMSCに、皮膚基底膜接着分子である7型コラーゲンを遺伝子導入し、表皮水疱症モデルマウスの皮膚に移植した結果、ヒト由来の7型コラーゲンがマウス皮膚中で正常に機能していることが確認されています。この結果を踏まえ、現在、表皮水疱症への適応を目指して研究開発が進められています。

研究施設

研究開発の加速および自社動物実験の推進を目的に、再生誘導医薬研究所および動物実験施設をそれぞれ122億円,70億円をかけて設立する計画で、2021年12月完成予定となっています。

 

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