再生医療ベンチャー

再生医療ベンチャー#39 ケイファーマ

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〇iPS細胞由来神経系細胞を用いた再生医療の開発、および創薬研究を行う慶應義塾大学発ベンチャー

〇脊髄損傷に対する、iPS細胞由来神経前駆細胞移植の臨床試験が準備中

〇iPS細胞創薬により見出したALS治療薬の臨床試験が進行中

会社名 株式会社ケイファーマ
K Pharma, Inc.
所在地 本社:東京都港区六本木7-7-7 Tri-Seven Roppongi 8F
研究所:神奈川県藤沢市村岡東2-26-1
    湘南ヘルスイノベーションパーク内(武田薬品湘南研究所内)
代表者 代表取締役社長 福島弘明
設立 2016年11月1日
上場 非上場

【会社概要】

iPS細胞由来神経系細胞を用いた再生医療の開発、および創薬研究を行うバイオベンチャーです。慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授(ケイファーマ社取締役)と、同整形外科学教室の中村雅也教授(同社取締役)らが開発した、iPS細胞由来神経前駆細胞を用いた脊髄損傷治療、および疾患特異的iPS細胞を用いた神経難病の創薬研究の実用化を目的として設立されました。

社名の「ケイ」は慶應義塾大学の頭文字「K」から取られましたが、同時にKindness (思いやり)とKnowledge (知恵・知識)の意味も込められています。

【事業内容】

iPS細胞由来神経前駆細胞を用いた脊髄損傷治療の開発と、疾患特異的iPS細胞を用いた創薬研究を進めています。

iPS細胞由来神経前駆細胞による脊髄損傷治療の開発

①脊髄損傷とは

脊髄損傷は、事故や転落等により背骨の中を通る脊髄神経が損傷することで、運動麻痺や感覚機能に障害が起こる病態です。日本国内に約10万人の患者がおり、毎年新たに約5,000人が発症していると言われています。現在有効な治療法はなく、リハビリによる機能回復のみとなっています。

②iPS細胞由来神経前駆細胞による治療開発

岡野教授と中村教授は慶應義塾大学において、脊髄損傷に対する iPS 細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療の研究を共同で進めています。これまでに、亜急性期脊髄損傷モデル動物、特に霊長類であるマーモセットを用いた動物試験において、ヒトiPS細胞から分化誘導した神経前駆細胞を移植することで運動機能が回復し、また腫瘍形成の危険性もないことを確認しています。

(出典:Kobayshi et al. “Pre-Evaluated Safe Human iPSC-Derived Neural Stem Cells Promote Functional Recovery after Spinal Cord Injury in Common Marmoset without Tumorigenicity.” PLOS ONE. 7(12):e52787 (2012))

③脊髄損傷を対象とした臨床試験

亜急性期脊髄損傷に対する iPS 細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療」の臨床研究について、第1種再生医療等提供計画が2018年11月に慶應義塾特定認定再生医療等委員会により承認され、その後2019年2月に厚生労働省により了承されています。この試験は主に安全性の確認を目的としており、移植後、約1年間の経過観察を行う計画となっています。現在、臨床試験の実施に向けて準備が進められています。

ケイファーマ社は、この治療法の実用化を目指すとともに、脳梗塞等の治療の開発も進めています。

疾患特異的iPS細胞を利用した創薬研究

慶應義塾大学で進められている、ALS患者由来iPS細胞を用いたiPS細胞創薬プロジェクトの臨床試験に参画しています。

①ALSとは

ALS(筋萎縮性側索硬化症, Amyotrophic Lateral Sclerosis)は、脊髄運動ニューロンの障害により筋萎縮や筋力の低下が起こる、進行性の難治性神経疾患で、日本全国で約9,200人の患者がいます。進行すると、歩行困難,言語障害,嚥下障害,呼吸器障害が起こり、日常生活を送ることが大変困難になります。原因は特定されておらず、治療法として進行を遅らせる薬はあるものの、症状を改善する治療法は現在のところありません。

②ALS患者iPS細胞を利用した創薬研究

ALSの薬の開発が進まない理由の一つに、有用な実験モデルがないことが挙げられます。家族性ALS患者において異常が見られる遺伝子がいくつか特定されてきており、それらの遺伝子を導入した変異マウスモデルが作製されていますが、ALSの病態を十分に再現したモデルはまだ確立されていません。

そこで、慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野教授(同社取締役)は、ALS患者の血液細胞からiPS細胞を作製し、そこから脊髄運動ニューロン細胞を分化誘導しました。その脊髄運動ニューロン細胞はALS患者と同じ遺伝子異常を有しているため、その細胞を使って、既存の医薬品1232種類のドラッグスクリーニングを行いました。

(出典:日本医療研究開発機構(AMED) 平成30年12月3日 プレスリリース)

その結果、パーキンソン病の治療薬として使われているロピニロール塩酸塩に、神経突起の短縮や以上たんぱく質の凝集といったALSで見られる病態を改善する作用、および神経細胞死の抑制効果があることを見出しました。

(出典:日本医療研究開発機構(AMED) 平成30年12月3日 プレスリリース)

③ALSを対象とした臨床試験

上記のドラッグスクリーニングの結果により、ロピニロール塩酸塩をALS治療薬候補とし、ALSを対象とした第I/IIa相医師主導治験が慶應義塾大学病院において進められています。ケイファーマ社は資金支援という形で参画しています。

 

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