〇皮下脂肪組織由来幹細胞から巨核球を誘導し、血小板を産生させる技術
〇血小板輸血代替としての実用化に向けての準備段階
〇創傷治癒(PRP代替)としての実用化に向けて、臨床試験を計画中
会社名 | 株式会社AdipoSeeds AdipoSeeds Inc. |
所在地 | 東京都港区三田1-4-28 三田国際ビル10階 |
代表者 | 代表取締役 宮崎洋 |
設立 | 2016年7月7日 |
上場 | 非上場 |
【会社概要】
脂肪由来幹細胞から巨核球を分化誘導し、血小板を産生させることで、輸血もしくはPRPへの応用可能な血小板製剤の開発を行う慶応義塾大学発のベンチャー企業です。慶應義塾大学医学部の池田康夫名誉教授と松原由美子特任准教授らが開発した、「皮下脂肪組織由来の間葉系幹細胞から血小板を人工的に創製する技術」の実用化を目指して設立されました。
社名は「脂肪」を意味する「Adipo」と「種」を意味する「Seeds」の組み合わせであり、皮下脂肪の細胞から新たな治療法を作り出すというビジョンを表現しています。
【事業内容】
脂肪組織からの血小板産生技術
皮下脂肪組織より樹立した脂肪由来幹細胞株(ASCL; Adipose-derived Mesenchymal Stem/stromal Cell Line)から巨核球を誘導し、血小板(ASCL-PLT; ASCL-derived Platelet Like Cells)を産生させる技術がAdipoSeeds社の独自技術です。
皮下脂肪組織より樹立したASCLは、均一な性質を持つ細胞集団で、増殖能が高く、凍結保存が可能です。ASCLを巨核球誘導培地中で培養することで巨核球を誘導しており、遺伝子導入を必要としない安全性の高い誘導法となっています。
産生された血小板は、末梢血由来の血小板と同等の血液凝固作用を持つ一方で、P-セレクチン暴露試験においては過剰活性化の動態も見られたため、血栓性合併症を引き起こす危険性をなくすために、最適な投与方法及びモニタリングシステムの研究が進められています。
脂肪組織由来血小板の実用化
①血小板輸血代替
現在、輸血用の血小板は100%献血に依存していますが、血小板の保存可能期間は4日間と非常に短く、安定した供給が難しいことが課題となっています。また、日本においては高齢化が進む一方で、若年層の人口減に伴い献血者が減少し、将来的に輸血用の血小板製剤が不足することも問題となっています。
AdipoSeeds社の製造方法においては、脂肪由来幹細胞の段階での大量製造および保管が可能であり、計画的な安定した血小板の供給が可能となります。
現在、慶應義塾大学病院臨床研究推進センターの支援を受け、実用化に向けての準備が進められています。
②創傷治癒促進
潰瘍等の創傷に対する治療法の一つとして、患者自身の血液より作成されたた多血小板血漿(PRP: Platelet Rich Plasma)が使用されています。しかしながら、大量の採血ができないため、PRPの使用量が限られること、また一定した品質のPRPの供給が難しいことが課題となっています。
ASCL-PLTでは創傷治癒促進に重要なサイトカインの分泌量が多いことが分かっており、治療効果が高く、かつ安定して提供できる治療方法として期待されます。
今後、慶應義塾大学医学部形成外科学教室の貴志和生教授や矢澤真樹専任講師と共同して、慶應義塾大学病院において臨床試験が計画されています。
また、ASCL-PLTの実用化に向けて、細胞加工技術や品質管理技術等において、日水製薬株式会社、東ソー株式会社、藤森工業株式会社と共同開発が進められています。