〇バイオ関連研究用試薬,機器の開発・販売や受託サービスといったバイオ産業支援事業がメイン事業
〇遺伝子・細胞プロセッシングセンターを増設し、CDMO事業を強化
〇腫瘍溶解性ウイルス治療と遺伝子改変T細胞治療(siTCRおよびCAR-T)の臨床試験が進行中
会社名 | タカラバイオ株式会社 TAKARA BIO Inc. |
所在地 | 滋賀県草津市野路東七丁目4番38号 |
代表者 | 代表取締役社長 仲尾功一 |
設立 | 2002年4月1日 |
上場 | 2004年12月7日 東証一部(4974) |
【会社概要】
バイオ関連研究用試薬,機器の開発・販売や受託サービスといったバイオ産業支援事業と、がんなどを対象とした遺伝子治療法の開発を行う遺伝子医療事業を展開しています。
寳酒造株式会社の持ち株体制への移行(宝ホールディングスの設立)に伴い、2002年にタカラバイオ株式会社として分社化されました。2004年にマザーズに上場、2016年に東証一部に市場変更しています。
以前は健康食品事業、キノコ事業も行っていましたが、2019年にそれぞれシオノギヘルスケア株式会社、株式会社雪国まいたけへ譲渡されています。
【事業内容】
バイオ産業支援事業
タカラバイオ社の売り上げの9割近くを占める主要事業です。バイオ研究用試薬,理化学機器の開発・販売と再生医療等製品開発支援や遺伝子検査支援の受託サービスを行っています。
①研究用試薬・理化学機器
TaKaRa®,Clontech®,Cellartis®の3つのブランドを展開しています。
・TaKaRa®:タカラバイオ社のオリジナルブランドです。遺伝子工学をはじめ、バイオ先般にわたる製品を取り揃えています。
・Clontech®:分子生物学や細胞生物学分野での製品を多く取り揃えています。2005年にClontech Laboratories社の買収により継承しました。
・Cellartis®:iPS細胞などの幹細胞分野での製品を多く取り揃えています。2014年にCellectis AB社の買収により継承しました。
さらに、2017年に独自のシングルセル解析システムを有するWaferGen Bio-systems社と、超微量DNA解析技術を有するRubicon Genomics社を買収し、超微量核酸解析領域の製品・サービスを展開しています。
②受託サービス
「再生医療等製品開発支援サービス」と「遺伝子検査支援サービス」の2つのサービスを展開しています。
・再生医療等製品開発支援サービス
細胞の受託製造や開発,品質試験,安全試験,セルバンクの作製,保管などのサービスを提供しています。
・ 遺伝子検査支援サービス
ヒトゲノムの配列解析,がん関連遺伝子の解析,腸内細菌叢の解析といった遺伝子検査支援に加えて、次世代シーケンスやゲノム編集などのサービスを提供してます。
研究開発・製造施設
前述のサービスはGCTP/GMPに準拠した自社遺伝子・細胞プロセッシングセンターで実施されています。
①遺伝子・細胞プロセッシングセンター(滋賀県草津市)
本社敷地内に位置するGMP/GCTP対応施設です。2015年5月に特定細胞加工物製造許可を取得しています。また、2016年には国際製薬技術協会のファシリティ・オブ・ザ・イヤーのファシリティ・インテグレーション部門賞を受賞しています。
さらに、CDMO(医薬品受託製造開発機関)事業の拡大に向けて施設の増設が着工されており、2019年中に完成予定です。
②遺伝子・細胞プロセッシングセンター LIC分室(神奈川県川崎市 ライフイノベーションセンター)
川崎キングスカイフロント地区のライフイノベーションセンター(LIC)内に設置されたGMP/GCTP対応施設です。2017年12月に特定細胞加工物製造許可を取得しています。
遺伝子医療事業
タカラバイオ社では、主にがんを対象とした遺伝子治療法として、以下の3つの開発が進められています。
①腫瘍溶解性ウイルス(HF10 / Canerpature; C-REV)
タカラバイオ社が開発を進めている腫瘍溶解性ウイルスC-REVは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の弱毒株で、遺伝子改変がされていない自然変異型のウイルスです。
根治切除不能・転移性悪性黒色腫(メラノーマ)を対象とした第II相臨床試験を終了し、2019年3月に再生医療等製品の製造販売の承認申請を行っています。また日本国内ではすい臓がんに対して第I相臨床試験が進行中です。日本国内については大塚製薬社と提携しており、承認後はタカラバイオ社が製造を、大塚製薬社が販売を担います。
海外においては、米国で医師主導第II相臨床試験が進行中です。また2018年に韓国企業の東亜ST社 (Dong-A ST Co., Ltd.)にライセンスアウトしており、韓国でも臨床開発が進められています。
※2019/9/30追記 メラノーマを対象とした承認申請は取り下げとなりました。今後はすい臓がんに注力をしていくとのことです。 (タカラバイオ株式会社 IR 『「腫瘍溶解性ウイルスC-REV」の開発計画変更のお知らせ』)
② siTCR®遺伝子治療
T細胞受容体(TCR)遺伝子治療に使う遺伝子ベクターの開発を行っています。同社が開発したsiTCR®ベクターは、目的の抗原認識部位をもつTCRを発現させると同時に、内在性TCRおよび内在性/導入のヘテロTCRをサイレンシングし、目的のT細胞を効率的に作製することができます。
この技術を用いて、がん抗原NY-ESO-1を標的とするTCRを発現するT細胞を作製し、現在大塚製薬と共同して、滑膜肉腫を対象とした第I/II相臨床試験を国内で進めています。また、固形がんを対象とした医師主導第Ib相臨床試験がカナダで進行中です。
③CAR遺伝子治療
CD19を標的としたキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞治療法の開発を行っています。
標的抗原のCD19は、同じくCAR-Tのキムリア(2019年2月承認)と同じですが、キムリアの対象疾患が小児および若年性(25歳以下) 急性リンパ芽球性白血病(ALL)、および成人のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫なのに対し、タカラバイオ社は成人ALLを対象に開発を進めており、現在、大塚製薬と共同して国内で第I/II相臨床試験が進められています。
遺伝子治療研究奨励賞(タカラバイオ賞)
同社は遺伝子治療の発展を目的として、遺伝子治療研究奨励賞(タカラバイオ賞)を創設し、毎年、授与しています。選考対象は前年の日本遺伝子細胞治療学会での発表者で、45歳以下の公的機関に所属する研究者が対象です(大学院生、学生、企業に所属する研究者は除きます)。歴代の受賞者は以下の通りです。
遺伝子治療研究奨励賞(タカラバイオ賞) | |||
第1回(2010年) | 岡田尚巳 | 国立精神・神経医療研究センター | Scalable purification of adeno-associated virus serotype 1 (AAV1) and AAV8 vectors, using dual ion-exchange adsorptive membranes. |
第2回(2011年) | 村松慎一 | 自治医科大神経内科 | A Phase I study of aromatic L-amino acid decarboxylase gene therapy for Parkinson7s disease. |
第3回(2012年) | 池田康博 | 九州大学大学院医学研究院 | Pigment epithelium-derived factor gene therapy targeting retinal ganglion cell injuries: Neuroprotection against loss of function in two animal models. |
第4回(2013年) | 上村顕也 | 新潟大学大学院医歯学総合研究科 | Novel electric power-driven hydrodynamic injection system for gene delivery: Safety and efficacy of human factor IX delivery in rats. |
第5回(2014年) | 三浦慶昭 | 富山大学附属病院第三内科 | Infectivity-selective oncolytic adenovirus developed by high-throughput screening of adenovirus-formatted library |
第6回(2015年) | 西川智之 | 大阪大学大学院医学系研究科 | Systemic administration of platelets Incorporating Inactivated Sendai virus eradicates melanoma in mice. |
第7回(2016年) | 町谷充洋 | 大阪大学大学院薬学系研究科 | NF-κB promotes leaky expression of adenovirus genes in a replication-incompetent adenovirus vector |
第8回(2017年) | 菅瀬貴仁 | 高知大学医学部付属病院免疫難病センター | Suppressor of cytokine signaling-1 gene therapy induces potent antitumor effect in patient-derived esophageal squamous cell carcinoma xenograft mice. |
第9回(2018年) | 櫻井文教 | 大阪大学大学院薬学系研究科 | Neonatal gene therapy for Hemophilia B by a novel adenovirus vector showing reduced leaky expression of viral genes. |