〇iPS細胞関連研究試薬の製造販売を中心とした研究支援事業や臨床検査受託を展開
〇間葉系幹細胞とiPS細胞由来グリア前駆細胞の再生医療製品の開発も進行
〇国内外に多くの拠点を持ち、様々な事業/サービスのグローバルな展開を目指す
会社名 | 株式会社リプロセル ReproCELL Inc. |
所在地 |
神奈川県横浜市港北区新横浜三丁目8-11 メットライフ新横浜ビル9階 |
代表者 | 代表取締役社長 横山周史 |
設立 | 2003年2月26日 |
上場 | 2013年6月26日 JASDAQ (4978) |
【会社概要】
iPS細胞関連研究試薬の製造・販売などの研究支援事業と、臨床検査の受託サービスや再生医療等製品の開発といったメディカル事業の2つを中心に行っています。
設立は2003年で、京都大学の中辻憲夫教授と東京大学の中内啓光教授の下、ES細胞培養試薬の販売を目的として設立されました。
iPS細胞の登場後はiPS細胞関連事業にシフトし、iPS細胞関連試薬の販売やiPS細胞由来組織細胞(心筋,肝臓,神経)が売り上げの大半を占めています。
また、再生医療製品の開発として、間葉系幹細胞とiPS細胞由来グリア前駆細胞の開発が進められています。
【事業内容】
研究支援事業
①iPS細胞関連研究試薬
iPS細胞培養試薬(培養培地,コーティング試薬,凍結保存液,細胞剥離液)、iPS細胞作製用試薬(リプログラミングキット),分化誘導試薬(低分子化合物,サイトカイン,抗体/染色試薬),三次元培養基材等を販売しています。中でも、iPS細胞培養培地の日本国内シェアは50%を超えているとみられています。
②創薬支援
創薬研究支援として、iPS細胞およびiPS由来組織細胞(心筋,肝臓,神経)を販売しています。さらに疾患モデルとして、アルツハイマー患者由来iPS細胞由来の神経細胞および、アルツハイマー原因遺伝子に変異を加えたiPS細胞由来の神経細胞を作製・販売しています。
また、遺伝子解析サービスや、CRISPR/Cas9による遺伝子改変サービスも開始しています。
iPS細胞関連以外では、ヒト組織サンプルを用いた薬効評価,薬物動態評価,安全性評価の受託を行っています。
また同社は、2018年にインドのBioserve社を子会社化し、Bioserve社が保有していた世界有数のバイオバンクを獲得しています。そのバイオバンクに保管されているがんを始めとする様々な疾患の生体試料(組織,血液,DNA等)の提供を行っています。
メディカル事業
①再生医療等製品開発
体性幹細胞製品とiPS細胞由来グリア前駆細胞の2品目の開発が進められています。
(1) 体性幹細胞製品Stemchymal®
2016年に台湾企業のSteminent Biotherapeutics Inc.から導入した脂肪由来間葉系幹細胞で、脊髄小脳変性症に対する治療の開発が進められています。
脊髄小脳変性症は、小脳や脳幹、精髄の神経細胞が変性してしまうことにより、歩行障害、嚥下障害、言語障害等が起こる疾患で、原因は分かっていません。日本国内の患者数は約3万人と言われています。
Steminent社が台湾で行った第I/IIa相臨床試験においては、安全性および有効性(症状の進行抑制効果)が確認されています。また、同社によりアメリカでの臨床試験も計画されています(2018年7月 第II相臨床試験 治験計画がFDAにより承認)。
日本での臨床試験はリプロセル社により行われる計画で、2018年6月に第II相臨床試験 治験計画がPMDAにより承認されており、現在試験準備中です(2019年9月現在)。
また、同開発品は2018年12月に希少疾病用再生医療等製品に指定されました。これにより、同開発品については開発助成金や税制措置、優先審査等の支援措置を国から受けることができます。
(2) iPS細胞由来グリア前駆細胞
iPS細胞由来グリア前駆細胞(iGRP)を用いた中枢神経系疾患の治療法を、米国企業のQ Therapeutics Inc.と共同開発しています。
リプロセル社とQ Therapeutics社の合弁会社は、合弁会社MAGiQセラピューティクス社を設立し、現在、横断性脊髄炎と筋萎縮性側索硬化症(ALS)を対象にiGRPの研究開発を進めています。
②臨床検査受託サービス
臓器移植や造血幹細胞移植における適合検査として、抗HLA抗体検査(スクリーニング検査/抗体特異性同定検査)、クロスマッチ検査、HLAタイピングの受託サービスを行っています。このうち抗HLA抗体検査については、2018年4月より保険収載されています。
拠点/グループ会社/関連会社
同社は本社・新横浜研究所以外にも、国内外に多くの拠点および関連会社を有しています。
①国内拠点
(1) 殿町・リプロセル再生医療センター
2019年4月に川崎スカイフロントに開設されました。iPS細胞由来グリア前駆細胞(iGRP)の製造を本施設で行います。
(2) 湘南研究所
GenAhead Bio社との提携に伴い、湘南ヘルスイノベーションパーク内に開設。GenAhead Bio社はCRISPR-SNIPERというCRISPR/Cas9を高効率化できる技術を有しています。同社と共業して、高度な遺伝子改変技術サービスを提供します。
②海外拠点
アメリカ、ヨーロッパ、インドに拠点があります。単なる販売拠点ではなく、それぞれオフィスとラボ機能を備え、iPS細胞関連研究開発や各種受託サービスを行っています。
③関連会社
(1) CELL Innovation Partners
次世代の創薬・医療ビジネスの創出の支援を目的として、2014年にリプロセル社と新生企業投資が共同出資にて設立しました。前述のSteminent Biotherapeutics 社(台湾)をはじめ、Elastagen社(オーストラリア),Promethera Biosciences社(ベルギー),Histocell社(スペイン),SYMICBIO社(アメリカ)といったバイオベンチャーに投資を行っています。
(2) MAGiQ
前述のとおり、iPS細胞由来グリア前駆細胞(iGRP)の治療開発を目的として、Q Therapeutics社との合弁会社です。iGRPの研究/臨床開発を進めています。
(3) Biorepository LLC/ Fox Chase Bioserve Pvt. Ltd.
Fox Chase Cancer Centerは米国の主要ながん研究・治療センターの一つです。インドでの生体試料の採取・提供の推進を目的として、リプロセル社とFox Chase Cancer Centerが合弁設立したのがBiorepository社です。さらにインドでの生体バンクの拡充を目的として、インドの主要な病院グループの一つであるKamineni Life Sciences Pvt. Ltd.との合弁会社Fox Chase Bioserve Pvt. Ltd.が2019年に設立されています。