〇iPS再生T細胞療法を独自技術とするバイオベンチャー
〇がんペプチドワクチンを用いた、再生T細胞の製造開発
〇固形がんに対する治験の実施に向けて、前臨床試験を進めている
会社名 | サイアス株式会社 Thyas Co. Ltd. |
所在地 | 京都市左京区吉田下阿達町46-29 京都大学医薬系総合研究棟411, 413S, 415 |
代表者 | 代表取締役 等 泰道 |
設立 | 2015年8月24日 |
上場 | 非上場 |
【会社概要】
京都大学iPS細胞研究所の金子新 准教授(サイアス社取締役)の開発した、iPS再生T細胞療法を独自技術とするバイオベンチャーです。これは、がん細胞を特異的に認識し攻撃するT細胞からiPS細胞を作製・増殖させ、再度T細胞を誘導することで、がん細胞傷害活性の高いT細胞を大量に作製する技術です。現在、固形がんに対する自家iPS再生T細胞療法の治験に向けて、前臨床試験が進められています。
【事業内容】
コア技術:iPS再生T細胞療法
サイアス社の独自技術は、iPS再生T細胞療法です。T細胞では、抗原を認識する部位(T cellreceptor; TCR)のゲノム配列の組み換えが起こり、それにより種々の抗原を認識する多様なT細胞が作られます。しかしながら、がん患者の体内ではこれらの細胞傷害性T細胞は疲弊した状態にあり細胞傷害活性を失っていることが分かってきています。また細胞傷害性T細胞は生体外で増殖させることが難しく、大量に得ることが困難です。
そこでこの技術では、がん細胞を特異的に認識し攻撃する細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)を患者から分離し、そのT細胞からiPS細胞を作製します(T-iPS細胞)。このT-iPS細胞は元のT細胞と同じゲノム配列を有するため、T-iPS細胞から再度T細胞に分化させると、誘導されたT細胞は元のT細胞と同様にがん細胞を認識し、さらに一度初期化したことで細胞傷害活性が回復し、がん細胞を攻撃することができます。
したがって、T-iPS細胞の段階で大量に増殖させ、その後T細胞に分化させることで、がん細胞に対して傷害活性を示すT細胞を大量に得ることができます。
この技術は、京都大学iPS細胞研究所の金子新 准教授らによって開発された技術です。同研究室が発表した論文は、Cell Stem Cell誌の表紙を飾っています。弓を構える2人の女性は、それぞれ元の、およびiPS技術で再生した細胞傷害性T細胞を表しており、着物には「T細胞」の文字も見えます。金子准教授は2018年よりサイアス社の取締役に就任しています。
がんペプチドワクチンによるがん細胞傷害性T細胞作製
サイアス社は、がんペプチドワクチンを用いたがん細胞傷害性T細胞の開発を行っています。これは、がんペプチドワクチンを認識するT細胞を元にT-iPS細胞を作製することで、治療効果の高い再生T細胞を作製する技術です。
がんペプチドワクチンは、オンコセラピー・サイエンス株式会社が開発したものを用い、この再生T細胞について、開発・製造・販売の許諾契約を同社と締結しています。
臨床開発状況
現在、固形がんに対する自家iPS再生T細胞療法の治験に向けて、前臨床試験が進められています。2020年代半ば頃の早期承認を目指しています。