〇高活性化NK細胞を用いたがん免疫細胞治療を開発
〇動物試験において、CAR-T細胞の約5倍の高い抗腫瘍活性を確認
〇2020年に臨床試験を計画、2022年の上市を目指す
会社名 | 株式会社ガイアバイオメディシン GAIA BioMedicine Inc. |
所在地 | 福岡県福岡市東区馬出3-1-1 九州大学病院地区 コラボステーションⅡ403号 |
代表者 | 代表取締役社長 倉森和幸 |
設立 | 2015年10月28日 |
上場 | 非上場 |
【会社概要】
高活性化ナチュラルキラー(NK)細胞を用いたがん免疫細胞療法の開発を行う、九州大学発のバイオベンチャーです。九州大学大学院薬学研究院の米満吉和教授の開発した、高活性化NK細胞を用いた治療の実用化を目的に設立されました。同社の高活性化NK細胞GAIA-102は、固形がんを対象とした動物試験において、CAR-T細胞の約5倍の腫瘍抑制効果が示されています。
社名は、医療・医術の象徴である” アスクレピオスの杖”になぞらえた同社のミッションである『医学の神:アスクレピオスの杖として、「遺伝子」と「免疫」のパワーを引き出し、難治性疾患と闘う。(fighting against unmet diseases using the power of Gene And Immune system as the rod of Asclepius)』に由来しています。
【事業内容】
高活性化NK 細胞免疫治療
①NK細胞とは
NK細胞は、がん細胞やウイルス感染細胞を攻撃する細胞傷害性リンパ球です。T細胞と異なり、樹状細胞からの抗原提示を受ける必要なく標的を攻撃する自然免疫の役割を担っています。NK細胞を用いたがん免疫細胞治療の開発が期待される一方で、生体外での増殖や活性化の培養が難しいことが課題となっていました。
②高活性化NK 細胞 GAIA-102
九州大学大学院薬学研究院の米満吉和教授らは、末梢血単核球よりT細胞マーカーであるCD3を発現する細胞を取り除き、さらに高濃度のIL-2を含む培養培地中で培養することで、NK細胞を90%以上の高純度で、2週間で数百倍に増殖させることができることを見出しました。さらに、このようにして得られた細胞は、パーフォリンやグランザイムといった細胞殺傷分子の含有量が、培養前に比べ4-10倍に増加しており、高活性化されていることが分かりました。
こうして得られた高活性化NK細胞(開発コード:GAIA-102)を用いたがん免疫細胞治療開発が進められています。
③固形がんに対する抗腫瘍効果
固形がんに対する免疫細胞治療は、腫瘍内への免疫細胞の到達が必要なこと、また腫瘍内では特有な免疫抑制微小環境が形成されていることから、血液がんほどの治療効果は達成されていません。例えば急性リンパ球性白血病(ALL)に対して高い治療効果のあるCAR-T細胞治療も、固形がんでの臨床試験においてはALLほどの治療効果は得られていません。
GAIA-102は、(1)腫瘍細胞集塊内にも集積すること、(2)免疫抑制性サイトカインや抑制性細胞の影響を受けず活性を維持すること、が 生体外での実験において確認されています。
GAIA-102をがん細胞を移植したマウスに投与したところ、肺がんや乳がんなど34種類のがん細胞に対して抗腫瘍効果があることが確認されています。特に卵巣がんを用いた実験では、CAR-T細胞と比較して約5倍の高い腫瘍抑制効果が見られています。
④開発状況
肺がんを対象とした臨床試験が2020年秋に計画されており、順調に進めば、条件・期限つき早期承認の再生医療等製品として2022年中の上市を目指しています。
2019年9月に、九州地域の大学の研究成果の産業化を支援する「QB第一号ファンド」などから第三者割当増資による資金を調達しており、開発が加速することが期待されます。
高活性化NK 細胞分離・培養キット
AdoptCell®-NK Kit
同社技術による高活性化NK細胞分離・培養キット「AdoptCell®-NK Kit」を、コージンバイオ社を通じて販売しています。