〇角膜内皮疾患を対象とした、他家培養角膜内皮細胞移植治療および点眼薬の開発
〇角膜内皮細胞移植治療は、臨床試験において安全性と有効性を確認
〇点眼薬治療は、有効性確認のための臨床試験が進行中
会社名 | アクチュアライズ株式会社 ActualEyes Inc. |
所在地 | 京都府京田辺市興戸地蔵谷1番地 D-egg 314号室 |
代表者 | 代表取締役社⾧& CEO 杉岡 郁 |
設立 | 2018年5月1日 |
上場 | 非上場 |
【会社概要】
角膜内皮疾患を対象とした、他家培養角膜内皮細胞を用いた細胞治療や点眼薬の開発を行うベンチャー企業です。同志社大学生命医科学部の小泉範子教授、奥村直毅准教授らの開発した、角膜内皮細胞の大量培養技術や、角膜内皮疾患に有効な点眼薬開発といった成果を基に設立されました。京都府立医科大学と共同して、水疱性角膜症を対象とした臨床試験が実施され、安全性とともに角膜の透明化や視力改善などの有効性が確認されています。現在、日米欧で同時に企業治験を実施することが計画されており、準備が進められています。Rhoキナーゼ阻害剤による点眼薬治療については、京都府立医科大学と共同して、現在有効性確認のための臨床試験が行われています。
【事業内容】
他家角膜内皮細胞移植治療
アクチュアライズ社は、他家角膜内皮細胞を用いた移植治療の開発を行っています。同志社大学生命医科学部の小泉範子教授(同社最高科学責任者(CSO))、奥村直毅准教授(同社最高開発責任者(CDO))らは、それまで困難であった角膜内皮細胞の大量培養技術を確立しました。その技術により増やした角膜内皮細胞を用いて、角膜内皮疾患の治療法の開発を行っています。
①対象疾患
アクチュアライズ社では、フックス角膜内皮ジストロフィおよび、水疱性角膜症を対象とした治療法の開発を進めています。
フックス角膜内皮ジストロフィ(Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy; FECD)は、角膜内皮と基底膜の間に細胞外マトリックスの沈着が生じ、角膜内皮細胞の減少等の障害が起こる疾患です。角膜内皮は角膜の最内部にある単層のシート状組織で、角膜組織中の余分な水分を輩出し含水率を一定に保つことで、透明性や恒常性を維持する役割を担っています。角膜内皮に障害をきたすと、角膜内に多量の水分が溜まることで白濁を起こします。FECDがさらに進行し、角膜の白濁により重篤な視力障害が起こった状態が水疱性角膜症です。この状態まで進行すると、現状、有効な治療法は角膜移植しかありません。角膜移植の40%が、FECDおよび水疱性角膜症と言われています。また、FECDの発症には民族差があり、白人に多く日本人では稀とされています。
この水疱性角膜症に対して、他家培養角膜内皮細胞移植治療の開発が進められています。
②開発状況
小泉教授らは、角膜内皮細胞の培養においてRhoキナーゼ阻害剤が角膜内皮細胞の接着を促進することを見出し、動物試験において角膜内皮細胞とRhoキナーゼ阻害剤を同時に注入する方法を確立しています。そこで、この移植法を用いて、京都府立医科大学の木下茂教授,上野盛夫学内講師と共同して、水疱性角膜症を対象とした培養角膜内皮細胞の注入移植治療の医師主導治験を2013年から実施し、合計35例の移植を完了しています。
最初に移植を行った11例において、移植後2年間の観察の結果全例で移植細胞が生着し、角膜が透明化することが確認され、最も著効な例では視力が0.03から1.0まで回復しています。また、腫瘍化や感染症といった問題は見られておらず、安全性と有効性が確認されています。この結果を受け、アクチュアライズ社では日米欧同時の企業治験が計画されており、現在、準備が進められています。
点眼治療薬
アクチュアライズ社では、角膜内皮疾患に対する点眼薬治療の開発も進められています。前述のRhoキナーゼ阻害剤を点眼薬として用いるもので、角膜内皮障害の早期段階であるFECDでは点眼薬治療、後期段階である水疱性角膜症では細胞移植治療という位置付けで開発が進められています。
京都府立医科大学の木下教授と共同して臨床試験が進められており、安全性の確認のための第1段階試験が終了し、現在、有効性確認のための第2段階試験が進行中です。